少女漫画に憧れて

「アーン、ちこく、ちこくぅー」 私の名前は佐々木咲、16歳 、乙女座でO型!現在時刻朝の7時20分、遅刻する時間帯?と不思議に思う方もいるので答えておく。 遅刻する時間ではありません!!!!! 私は少女漫画が大好きなのだ!少女漫画のような恋がしたい!だったら同じことをしなきゃいけない! そんな私は毎朝7〜8時まで家の前の道を冒頭のセリフを言いつつ往復しているのダ。

jotakuro

13年前

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だれかそこの角でぶつからないかな そうだ食パンを咥えていこう バターをつけてほんのり焼いたパン ぶつかるなら男の子がいいな それもカッコいい男の子 それで、学校についたら…… あー!お前はー! って

13年前

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...でも、実際うまくいったことはないの。 やっぱりこんなに朝早くから、かっこいい男の子は住宅街を歩かないんだわ。 「はぁ。。。。」 やっぱり普通に恋したほうがいいのかなぁ。 こんな少女マンガみたいな恋を夢みるなんて、アホなのかなぁ... そろそろ現実を... でもやっぱり.... あの、この角からかっこいい男の子が出てきたら........ ドンッ!!!!!!!! 「痛っ!」

pyon

13年前

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そうだ、お決まりのセリフを!!「ちょっとー、どこ見て歩いてんのよー!?」と言って見上げた瞬間、驚きの余り二の句を継げなかった。 白馬にまたがる青い瞳に端正な顔立ち、ブロンドヘアの美少年。 頭上には小さな冠、真紅のマントに白と黒のストライプのかぼちゃパンツ、純白のタイツという出で立ち。 ベタ過ぎるくらいの王子様だ。 「あぁ、膝を擦りむいていらっしゃる。申し訳ありません、すぐに城で手当を!!」

JPClown

13年前

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「まて!」突如割って入ってきたのはGパンTシャツ、さらさらヘアーの青年。「大丈夫かいお嬢ちゃん」八重歯がキラリと光った。首のスカーフは風もないのになびいている。 「お嬢ちゃん、あんたは騙されている。少女漫画のような人生を送りたいんだろ? 気が付くんだ!実際は少女漫画など読んだことのないオッサンどもに操られていることに!」 咲の目はハートに変わり、辺りにお花畑が広がり出した。

yemaya

13年前

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「やっと・・やっとであうことができた・・・私の王子様・・」 咲は今まで読んだ少女漫画の展開をフル回転で思い出す。 (そうだわ、こう言う時はさりげなく一回引いて二回目に・・) 「だっ大丈夫です!学校遅れちゃうんで私はこれでし・・失礼しますっ」 咲はこう言い捨て、走った。 目が覚めた。 ここはどこだろう? 咲は病院のベッドの上にいた。 「もしかして夢?」 咲は落胆した。 すると病室のドアが開いた。

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ドアが開いて、 入ってきたのは同じ学校の男子生徒だった。 「大丈夫か?!」 ごく普通の男子、みたことはある、多分。 でも名前が分からない、覚えていないのに。 なんでこんなに私を心配しているのだろう。 そもそも、なんでここがわかったの、 学校は? 様々な疑問が浮かぶ中、 とりあえず、 「ありがと」 「そんなお礼言われる事してないよ、 だって、僕が」 何か言おうとしている彼の言葉は小さくなった。

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「僕は! あなたのことが! あなたがーー」 少年の言葉が終わらぬまま、少年の姿はボヤける。やがて消え、咲はそれが夢だと気づく。 目を覚ますとそこは学校の保健室のベッド。 「やあ、お目覚めかな。眠り姫」 甘美に響く声の主に目をやると、黒髪短髪、爽やかな男の子がイスに座っていた。 「あ」 ガラガラ、と保健室のドアが開いた。そこにはこれまた美少年が立っていた。 「咲。そんな男より俺のところに来いよ」

nezumicyan

13年前

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咲の中で何かがプツッと切れる音がした。 「無垢で優しい男の子の次はイケメン二人が恋の争奪戦!?どうせまた夢なんでしょー!わたっ・・私、シンケンなのにっ。からかうのもいい加減にしてぇーー!!」 咲は二人に飛びかかると蹴り飛ばし、引っ叩き、保健室から追い出した。 二人を叩いた手のひらからは、微かな痛みが伝わってくる。 やがて咲はお決まりのセリフをボヤきながら、二人の後を追いかけていった。

BANZAI

13年前

- 完 -