親父のフィアンセとゼクツィ

今日は朝からついてなかった。 お気に入りのネックレスは着けた途端に壊れるし、電車は停電がおきてかなりの時間遅れて学校は遅刻。 午前の授業が終わりご飯を食べようとカバンを見ると頑張って作ったお弁当が入っていない。 それだけでも気分は落ち込んでるのにお昼を買いにコンビニへ行くと見たく無いものを見てしまった。

ki-ro

12年前

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あれはオヤジに見える。 信号を渡ってくるのはどうみてもオヤジだ。 隣に若い女がいることを除けばオヤジでない理由はひとつもない。 オヤジは女と談笑しながら歩いている。 ほどよい間隔があれば仕事関係に見えるのになぜ腕を組んでいる? おいおいちょっとまて。 これ声かけたらやばくね? 悩むあたし。そこに 「おう!夏美!学校どうした?」 あたしに気づいたオヤジは女と腕を組んだまま反対の手をあげた。

naomi

12年前

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えー⁉まじか、自分から声かけてきたよ。普通この状況を娘に見られたくないってのが親心ってもんじゃないの⁉ 応えるべきか、気づかないふりをするべきか迷ってる間に、オヤジはあたしの前に立っていた。 「どうしたんだ夏美?挙動不審だぞ。」 女性と腕を組んだまま笑顔で聞いてくる。 「………お、お父さん、この人、知り合い?」私が聞くと、 「おう、紹介するよ。この人はお父さんのフィアンセでーす‼」

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…え?今、私の耳がおかしくなったか? 「…ごめん、今何て言ったかよくわからなかったんだけど」 「えっとぉ、今度彼と結婚する事になりましたぁ〜。よろしくねっ♡」 …。 道端での突然の結婚会見に、私の頭は真っ白になった。 「あの…この人いくつ?」 「あ〜、今19だ」 はい⁉私(21)より年下⁉ うちは父子家庭だから再婚するのは構わないが、だからって若すぎるだろ! 騙されてるんじゃないんのかアンタ!

hyper

12年前

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開いた口から言葉が出ない。 そんな私にオヤジは嬉し恥ずかしで言った。 「あーほらあれだ、あれ!愛に歳は関係ないんだぞ?」 「ねーっタッちん♡ 」 私、何も言ってないし……ん? 「タッちん、早くぅ行こうよ〜ぅ♡」 竜男でタッちんかよ……おぇ。 「よーし娘公認だしなぁ!今日はハッスルしちゃうぞー!ムフゥ♡」 ………… 。 うふふえへへ、と笑い合いながら二人は歩き出した。 今の出来事が夢ならいいのに。

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あー…ホント悪夢だよ…悪夢なら目を覚めてよ…。 私は学校の屋上で1人佇む。あのオヤジが再婚…しかも私より下の女性と…。ありえない…こんなのありえないよ! ああ、もうこんな現実が嫌になったな…いっそのこと別の世界へ行きたいよ…例えば私はモデル並みに魅力がある星の元で生まれた設定の世界とか、超イケメンの幼馴染がいる世界とか…。 あれこれ考えて落ち込んでいると、 「おい、どうしたんだよ?」

12年前

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そう声を掛けてきたのは、私の彼氏の侑ちゃんだった。 イケメンじゃないけど、落ち着いてて包容力もある、実は結構自慢の彼氏。 「侑ちゃぁん。聞いてよ、もう最悪」 私は、今日の出来事をブチまける事にした。 娘より若い女と再婚なんて、信じらんない! 私の愚痴を穏やかに聞いてた侑ちゃんは、 「じゃあさ、俺達も結婚しちゃおうか?ほら、俺は夏美のお父さんより年上だし、ちょうどいい感じじゃない?」

reno

12年前

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「えっ……侑ちゃん」 「夏美。結婚しよう」 侑ちゃんは、中年と呼ばれる年齢で入学してきた人だった。初めはかなり浮いていたけど、今ではすっかり同級生と打ち解けている。これも侑ちゃんの人柄によるものなんだろう。 ——うん。侑ちゃんとなら、私。 そう答えると、侑ちゃんは子供みたいに笑った。 学校が終わると、ゼクツィを買おうと2人で書店に寄った。そして私は、悪夢のような光景を再び目にすることとなった。

ぷぷりか

12年前

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そこにはさらに別の女を連れ父がいた。侑ちゃんは「あの人が再婚の人?」と少し戸惑っていたが私は戸惑うを越して固まっていた。すると最初の再婚の女性が来て喧嘩になると思いきやなんと2人の女子が父を挟んでゼクツィを読んでいるではないか!(あいつら本気だ!!)私はさらに固まった。まさか二股公認親父がいるなんて予想外だった。侑ちゃんにゼクツィを買って来てもらい家に帰って父に聞くとあと3人ほどいるらしい。

- 完 -