風見鶏と詩と
詩を書いて下さい
- 1 -
夏休みの国語の宿題
僕は大きく紙に書いた
勢いよく
時には静かに
全神経を集中させる
止め、跳ね、払い。
…できた
何百字の韻律に勝るほど
今の、僕の、全霊を体現している
半紙に浮かぶそれ
「詩」
- 2 -
君へ
「今日も寒くないか?濡れてはないか?」と
僕は平気だから
「君は何故」と
「君はあたたかい」と
僕は風見鶏
君は鳥
今日も僕は言えません
- 3 -
テレビの中で大勢の人が並んでこっちを見ている。
うしろからは汚い笑い声が聞こえている。
笑い声を聞きたくなくてイヤホンを耳に詰めるが、イヤホンからも同じ声が聞こえてくる。
テレビの中の人たちはじっとしたまま動かない。
窓の外の空があんまり綺麗だから僕は死ぬことにした。
- 4 -
蒼い空
雲ひとつ無い空
太陽だけが浮かぶ
紅い光
涼しい風
蒼い風
静かに揺れる草
翠の草
そっと耳を澄ましてごらん
生命の色が見えてくる
- 5 -
深く深く、おぼれてく。
し界は青い
っていう、だから僕は
目蓋を閉じる。
深く深く、おぼえても、
沈んだ空がすくわない。
だから僕は秋で
しまった、
っていう話。
水の星の静か。
聴かない平ら、
ひたひたと
おぼれて
何。
目蓋をこじ開ける
早く早く、
っていう声おぼえてた。
音だけが足りない。
だから僕は、詩って浮き上がる。
夏休み終わり。
- 6 -
タイルの色が不思議で
草花の形が面白くて
虫たちの鳴き声が涼しげで
食べるものは全て美味しくて
そんな素敵な世界
ずっとずっと続いたらいいのに
なぁんにも知りたくないんだ
昨日の人に初めまして
明日の自分にさようなら
可能性を潰す大人じゃなく
可能性だけを探す子供がいい
生きているのが楽しくて
知らないことだけ追いかけたい
そんなそんなわがままは
ただ風に消える
「少年の詩」
- 7 -
目を開ける。
テレビが、「夏休み明けには子供の自殺が多い」と告げている。
嘘つき。
大人が行かなくてもいいっていう。
だけど、行かなかったら、それでも大人は怒るんだ。
嘘つき。
目を閉じる。
ほら、見て。
目を閉じると、同じように詩を書いてる友達がいる。
ひとりじゃない。
風見鶏でさえも、僕の大親友。
僕は嘘つきじゃないよ。正直者だよ。
しの世界にいた方が、僕は幸せだ。
- 8 -
僕は詩を書いて
君も詩を書く
窓を開けたら風が舞い込んでくる
胸の奥がすぅっとする
君がいる
目蓋の裏に
ツン、と、鼻を刺すにおい
君は下にいた
確かにいた
ぐったりと、潰れたまま
僕は、手を伸ばして
舞ってきた羽根を掴む
僕は動き出した
飛んでゆくんだ、どこまでもいつまでも
君とまた詩を書きたい
君とまた、見えない何かで繋がりたい
君とまたいきたい
しの世界へ、しの世界で
- 完 -
作品情報
風見鶏と詩と
#21536
- リレー期間
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1年3ヶ月