風見鶏と詩と

詩を書いて下さい

crow9

10年前

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夏休みの国語の宿題 僕は大きく紙に書いた 勢いよく 時には静かに 全神経を集中させる 止め、跳ね、払い。 …できた 何百字の韻律に勝るほど 今の、僕の、全霊を体現している 半紙に浮かぶそれ 「詩」

ノナメ

10年前

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君へ 「今日も寒くないか?濡れてはないか?」と 僕は平気だから 「君は何故」と 「君はあたたかい」と 僕は風見鶏 君は鳥 今日も僕は言えません

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テレビの中で大勢の人が並んでこっちを見ている。 うしろからは汚い笑い声が聞こえている。 笑い声を聞きたくなくてイヤホンを耳に詰めるが、イヤホンからも同じ声が聞こえてくる。 テレビの中の人たちはじっとしたまま動かない。 窓の外の空があんまり綺麗だから僕は死ぬことにした。

火鉢

10年前

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蒼い空 雲ひとつ無い空 太陽だけが浮かぶ 紅い光 涼しい風 蒼い風 静かに揺れる草 翠の草 そっと耳を澄ましてごらん 生命の色が見えてくる

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深く深く、おぼれてく。 し界は青い っていう、だから僕は 目蓋を閉じる。 深く深く、おぼえても、 沈んだ空がすくわない。 だから僕は秋で しまった、 っていう話。 水の星の静か。 聴かない平ら、 ひたひたと おぼれて 何。 目蓋をこじ開ける 早く早く、 っていう声おぼえてた。 音だけが足りない。 だから僕は、詩って浮き上がる。 夏休み終わり。

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タイルの色が不思議で 草花の形が面白くて 虫たちの鳴き声が涼しげで 食べるものは全て美味しくて そんな素敵な世界 ずっとずっと続いたらいいのに なぁんにも知りたくないんだ 昨日の人に初めまして 明日の自分にさようなら 可能性を潰す大人じゃなく 可能性だけを探す子供がいい 生きているのが楽しくて 知らないことだけ追いかけたい そんなそんなわがままは ただ風に消える 「少年の詩」

きなこ

9年前

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目を開ける。 テレビが、「夏休み明けには子供の自殺が多い」と告げている。 嘘つき。 大人が行かなくてもいいっていう。 だけど、行かなかったら、それでも大人は怒るんだ。 嘘つき。 目を閉じる。 ほら、見て。 目を閉じると、同じように詩を書いてる友達がいる。 ひとりじゃない。 風見鶏でさえも、僕の大親友。 僕は嘘つきじゃないよ。正直者だよ。 しの世界にいた方が、僕は幸せだ。

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僕は詩を書いて 君も詩を書く 窓を開けたら風が舞い込んでくる 胸の奥がすぅっとする 君がいる 目蓋の裏に ツン、と、鼻を刺すにおい 君は下にいた 確かにいた ぐったりと、潰れたまま 僕は、手を伸ばして 舞ってきた羽根を掴む 僕は動き出した 飛んでゆくんだ、どこまでもいつまでも 君とまた詩を書きたい 君とまた、見えない何かで繋がりたい 君とまたいきたい しの世界へ、しの世界で

- 完 -