なんかいいことありそうな予感‼ さて、外に出てみよーっと。
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その瞬間、道路のくぼみに溜まった水がばしゃりとかかった。もちろん私に向けて。いやいや、嘘でしょう? とりあえず落ち着こう。幸いにも家からすぐだったからまだやり直しは効くはず。もう一度、お風呂に入ろう。そして新しいワンピースを着て出直すのだ。 そしてはたと気付いた。そうだ。セールで新しく買ったワンピースを着てこなかったから、これはいわば神様からの暗示ね。ありがとう神様。ありがとうバーゲンセール。
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「かみさまぁ~ばーげんさまぁ〜ありがと~う♪」 なんて口ずさみながら 新しいワンピースを着て、さぁ、再出発!! よし、今回は水を避けたぞ。 今度こそいいことがありそうな予感!!
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淡い期待もつかの間。 突然、降って湧いたような車がやってきて、水たまりを辺りに撒き散らしていった。 幸い、ワンピースへの直撃は免れたものの、足下の被害は尋常ではなかった。 「何、今日私水難が酷いの? 家の前から先に進めないんだけど。それとも、家の中で決められたフラグ解消しないと進めないって、ゲーム的なノリ?」 ヒールを床に叩きつけると、私は家の中に戻っていった。 "絶対にいいことあるんだから"
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ヒールを変えて再出発。 もちろん、水たまりは回避。 家から10m進んだ。 私が踏んだマンホールが破裂。 ヒールやワンピースどころじゃない。 周りの人が私を見てる。 「滝の修業きつかった‼」 ここ1番の声で言い張りながら帰宅
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こんな所で挫ける私ではない。このワンピースはきっと今日に相応しくなかっただけだ。 ブランドのスーツで颯爽と家を出る。きっと今日は良いことがあるのだから、この服が相応しい。 あっちはマンホールがあるから別の道にしよう。そう思って角を曲がった瞬間、地面がどろりと動いて派手に転んでしまった。 傍を見れば【コンクリート舗装中】の看板が。 即刻Uターン。 違うの。今日はきっと良いことがあるに違いないの。
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どうやら神様は私がいい目に遭うのが恨めしいらしいわ。 でもそんなの関係ない。 私は白いブラウスに赤いスカートをはいて家を飛び出した。 すかさず大型トラックが目の前を横切る。勢いよく跳ねる泥水。 甘いわね。塀のうらに隠れた私に隙はない。 だけど天はあくまで私の敵らしい。 滝のような雨が降り出す。 「雨がなによ。濡れればいいのよ。欧米では傘を指す人の方が珍しいんだから!」 私は構わず歩き出した。
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雨の中すすんでいると、小さな女の子が歩いて来た。 赤い下地に白い水玉模様てそろえた傘と長靴が可愛らしかった。 私は少し恥ずかしくて顔を伏せた。 すると女の子が私の前で立ち止まったではないか。 「お姉さん、傘をささないの?」 ささないのでなくて、させないのよ。 「傘を持ってないの」 私が呟くと、女の子は自らの傘を私につきだしたのだった。
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「お姉さん、一緒に入る?」 女の子は言った。 「いいの?」 私はきいた。 「うん」 女の子は答えた。 白いブラウスを着て赤いスカートを履いた私と赤地に白い水玉柄の長靴を履いた女の子は 並んで傘を差しながら歩いた。 気がつくと雨はやみ 目前には虹がかかっていた。
- 完 -