「告っちゃいなよ。絶対大丈夫だって!裕香と清水くん、仲良いもん。向こうも絶対裕香のこと好きだよ」 「…ほんと?そーかなぁ」 絶対、100%成功するって思ってた。 オッケーの返事貰った後の可愛い反応の練習もしてたのに。全部台無しだ。 「ご、ゴメン! ずっと言おうと思ってたんだけど…。 俺………剛が好きなんだ…」 好きな人はゲイでした、か。 ハハハハッ 笑えない。
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「そう、なんだ」 笑えない。でも何も言わないままだと清水が傷付く。 「俺のこと、気持ち悪いと思ってんだろ?」 「そんなこと、ないよ!」 ビックリしたけど、でも否定しちゃいけないじゃん。清水は本気なんだから。私も本気だから、わかるよ。 「ごめん」 清水はひたすら謝る。
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「謝らないでよ。清水が悪い訳じゃ無いし」 「でも、俺・・・小宮の気持ちには絶対答えられないから」 絶対、とか言っちゃうかー。 いや、そりゃゲイなんだから、そうでしょうけど、にしてもさー、仮にも今告白してきたばっかの女、しかもずっと仲良くやってきた私に向かって・・・。 まあ、そんなヤツだって分かってたけどね。 そんなトコも、好き、だったんだけどな。 「そっか、ハッキリ言ってくれて良かったよ」
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そんな散々な私の告白と彼のカミングアウト以降、清水は以前にも増して私によく絡んでくるようになった。 「だって小宮しかアレを知らないし、小宮にしか相談できないから」 振った女に恋愛相談ってデリカシーの欠片も無いけど、「しか」ってなんか、「私だけ」って勘違いしちゃいそうになる。 気付くと私と清水は学校生活において常に行動を共にするようになり、周りからは当然そういう仲に見られていたと思う。
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最初のうちこそその特別感が嬉しくもあったけれど、段々と心の負担になってきた。 「清水と付き合ってんの?」 「付き合ってないよ。ホント何でもないの」 「またまたー。照れちゃって」 そんな会話にもうんざりしている。 「俺、今度あいつ誘ってみようと思うんだ。二人で出掛けるの、さ」 またいつものように清水が相談を持ち掛けた。 「いいんじゃないの」 もううんざりだ。 「なんだよ、その言い方」
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「私言ったじゃん」 唇が震える。 「清水のことが好きだって」 ああ、駄目。言葉が止まらない。 「告白、したじゃん」 言わなくたって良いのに。このまま相談に乗り続けていたら、清水の一番近いところに居られたかもしれないのに。私は清水の、無神経なところが好きだったのに。 「好きでもないのに、必要以上に踏み込まないでよ」 人って、満足できない生き物なの。 "それ以上"を望んでしまう。
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それから、清水とは、ぎくしゃくするようになってしまった。 あーなんで‥。 あんなこと言わなければ、そばに居れたのかな‥? しばらく、憂鬱な学校生活が続いていた。 友達が裕香、「裕香、げんきないじゃん。」 と声をかけてくる‥。 でも、なかなか言い出せない‥。 はぁーあ‥。
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私は本当に清水のこと好きだったのかな。 向こうだって自分がゲイだって告白するのはとても勇気のいることだったはず。 でも彼は正直に話してくれた。 それなのに、私は自分の事ばかり考えてる。 「裕香ーねえ聞いてるー?」 「私、清水に謝ってくる!」 そう言って席を立つと、私は清水のいる教室まで向かおうとした。 「ねぇ小宮さんちょっといいかな」 声をかけてきたのは剛だった。 「清水のことで話があるんだ…」
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「え!?清水とは会った事もない!?」 驚愕の展開だった。 剛は、清水とは会った事もなければ、友人から私達の三角関係の事を話されるまでは清水の名前すら知らなかったのだとか。 じゃあ、、、あれはあいつなりの照れ隠しだったのだろうか。 「さあ?そんな事あいつに直接聞けよ。ところで小宮さん」 「ごめんなさい」 私は即答すると、走った。 この胸の高鳴りが心地よい。 空は青く、もってこいの告白日和だった。
- 完 -