お目覚めですか眠り姫?

眠り姫はニヤニヤしていた。 魔女に魔法をかけられ眠りについてから、今に至るまで、白馬の王子様と幸せに過ごす夢ばかり見ている。 こんなに幸福な夢ばかり見れるのなら現実に戻りたくなんてない! しかし、ある日眠り姫のもとに本当に王子が現れ、魔法を解く口づけをした。 「ちょっと!起こさないでよ!」 目が覚めた瞬間思わず口に出た。王子は目が点になっている。 「君は魔女に魔法をかけられていたんじゃ…」

ゆらぎ

12年前

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「そうよその通りだわ!魔法のおかげであんな素敵な王子様と夢の中で幸せに過ごせてたのに!」 そこで私はハッと我に返った。 …ちょっとばかし今のはやり過ぎてしまっただろうか。 色々思うことはあるけれど、現実離れな夢から覚めたこんな寝ぼけ頭じゃうまく状況整理なんか出来やしない。 とりあえず目の前の男と少しずつ話をしてみることにした。 「ごめんなさい、私まだ寝ぼけてて。…あなたはどうして私を助けたの?」

noname

12年前

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「何でっていうか」 王子が下を向いて黙り込んだ。 「え、何」 様子がおかしい、どうしたというのか。 顔を伺おうとすると、突然彼の鋭い眼光が姫を射た。 「君さ、魔法かけられてたんだよね」 口調が明らかに違う、何やら怒っている。 「そうだけど」 予想外の反応に姫は困惑した。 「なら何で口づけごときで起きるのさ。僕は君が魔法で眠らされていてキスし放題って言うから命からがら来たのに、まるで詐欺じゃないか」

noname

11年前

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今度は眠り姫の目が点になる番だった。 王子といえば、気高く優しく美しい、が常識のはず。現に夢の中の王子はそうだった。 それなのに、この男は何? 眠れる美女を好きなようにしようだなんて。それではまるで変態だ。 しかも、自分の行為を棚に上げて相手に怒りをぶつけるとは、何と恥知らずな。 その上さして美しくもない。全く以って許しがたい話。 「何が詐欺よ、この変態王子!」 眠り姫は思わず叫んでいた。

misato

11年前

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そしてそばに落ちていた石ころを投げつける。 「この変態!どっか行きなさい!」 「ちょっと、やめろって!姫といえばもっとおしとやかで何にでも寛容なものじゃないのか?ぜんぜんイメージと違うじゃないか!」 王子は怒った様子で怒鳴り散らす。 「それはこっちのセリフよ!それに、姫がすべておしとやかだなんて考え方はもう古いのよ!」 「そういう君だって古い王子様のイメージに憧れてるんだろう?僕と一緒じゃないか」

kam

11年前

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石ころを掴んだ右手を頭上に振り上げたまま、姫はピタリと動きを止めた。 「君? どうしたの?」防御姿勢は崩さずに王子が尋ねる。 「アンタの言う通りかも」姫は悲しげに呟いた。糸の切れた操り人形のように、だらんと右腕を下ろす。石ころが地面に転がる。 「私ったら何を夢見ていたのかしら。あんな素敵な王子様は現実にはいやしない。現実の男はアンタみたいな下劣な動物なのよ! 私、今度こそ永遠の眠りに就きます!」

fly

11年前

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「私、魔女に会いに行く。そして、もう一度眠りの魔法をかけてもらうわ」 「自ら魔女に魔法をかけられにいくなんて、そんな話聞いたことがないぞ」 「あなたには関係ないわ。くだらない現実につき合うくらいなら、一生夢の中の方がマシよ」 「甘えているんじゃないぞ!」 互いの言葉に熱が籠もり始めた頃、王子はいつしか眠り姫を叱っていた。 「目を背けたい現実があっても、それでも僕は、キスをするなら現実がいい!」

aoto

11年前

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「君は、目を覚ましたんだ。これから君は現実を生きるんだよ」 王子の言葉に、姫は俯いた。 「現実には君の夢見る素敵な王子はいないかもしれない。僕みたいな不毛な欲望にエネルギーを費やしてばかりの冴えない男しかいやしないさ。でも、もう一度眠りにつくなんて馬鹿げてる」 王子は生まれてこの方、始めてこんなにも熱くとうとうと語った。一体何のために言葉を尽くし姫を説得しているのか、分からなかった。

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「ごめんなさい」 姫が初めて謝罪の言葉を口にした。 「分かってくれたんだね!」 「なぜ私が赤の他人の貴方にそんな事言われなきゃならないのかよく考えてみたのだけれど、サッパリ分からないわ」 「え、さっきの神妙な顔はそういう意味⁉︎」 ここまできての仕打ちにさすがの王子もショック。 「…君は本当に変わってる」 変態王子に言われたくないと眉をひそめた姫に kiss 「え?」 途端、目の前が歪み出して。

ゆりあ

10年前

- 完 -