先週で定期テストが終わり、席替えをすることになった。数字の書いてある紙が入った箱が順番に回されていく。 今回こそ。 千春は、祈るように手を組む。今回こそ、熱田くんの隣じゃありませんように! クラスの人気者の熱田くん。明るくてムードメーカーな彼の隣の席を引き当てるのはなぜか毎回、千春だった。もうこれ以上、女子の冷たい視線に耐えられない。 そんな思いも虚しく… 「よう、また隣だな!」
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荷物を抱えた彼が、ニッカと綺麗な歯並びを見せた。 「わーこの机ガタつくなー」なんて言いながら荷物をせっせと詰めて行く。千春の気も知らないで。 「御成さん、ちっさいからアタシが前だと黒板見えないんじゃない?」 前の席になった飯塚香織が身体ごと振り返る。ああ、また始まった。争奪戦の開戦合図。 「あ、うん……前の方が助かる、かな」 熱田くんの呪いから解放されさえすれば、それで良い。しかし彼は人気者。
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