むかしむかしある所に、ジャックと言う少年が、お母さんと暮らしていました。ある日、お母さんは乳を出なくなった牛を売るようにジャックに頼みました。 ジャックは牛を連れて町まで歩いてました。ぐんぐん歩いていると、変わったおじいさんに出会いました。 「どこまで行くのかい?」 「町まで牛を売りに行くんだよ」 おじいさんは牛をまじまじ見て、少し考えた時、おじいさんはジャックに何かをくれました。
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それは1冊の本でした。 「これはこの世界の台本だ」 少年はタイトルに目を通します。 『ジャックと豆の木』 少年は自分の名前が書いてあることに驚き、顔を上げると、おじいさんはもういませんでした。 さっきのは何だったんだろう。そう思った少年が再び歩きだそうとした時です。 「どこまで行くのかい?」 さっきとは違うおじいさんが話しかけてきました。
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「町まで牛を売りに行くんだよ。でも、さっき、へんなおじいさんにあったんだ」 ジャックが事情を説明してさきほど貰った本を見せると、おじいさんはその本を興味深そうに見つめた後、一枚の葉っぱをくれました。とある豆の木の葉っぱだそうです。ジャックが首を傾げると、おじいさんはこう言いました。 「豆を渡すから牛を売ってくれと言われても、決して売ってはいけないよ。さもないと、私のようになってしまうからね」
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葉っぱをくれたおじいさんが去ってしまうと、ジャックは再び歩き始めました。たくさん歩いて疲れたジャックは、牛を木に繋いで腰を下ろすと、貰った本を開いてみました。 自分の名前しか読めないジャックには、何が書かれているのか分かりませんでしたが、文章の合間には大きな豆の木と哀れな大男が描かれていました。 そこへまた見知らぬおじいさんが現れました。 「どこまで行くのかい?」 「町まで牛を売りに行くんだよ」
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「それは大変だね。街まではまだまだ遠いよ。坊や、これをやるからわしにその牛を売らないかい?」 そしておじいさんはポケットから幾つかのピーナッツを取り出しました。ピーナッツは殻の中でからからと音をたてました。 ジャックは悩みました。さっきのおじいさんの言う通り、豆と牛を交換しないのが良いのでしょうか。それともピーナッツは豆ではないから交換しても大丈夫でしょうか。
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すると突然、牛がべろんと舌を伸ばし、おじいさんの手のひらのピーナッツを全部食べてしまいました。 ぽりぽりぽりぽり… 「あー」 「おやおや」 唖然とするジャックとおじいさん。 牛はゆっくりと体を沈め、眠ってしまいました。 と、 その鼻からニョキニョキ 立派な蔓が伸び、緑色の葉っぱが次々に開きます。 「貰った葉っぱと同じだ…」 そっと触れると金色の豆がぼろぼろとこぼれ落ちてきました。
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それはキラキラと輝いて、本物の金で出来ているかのようでした。これを売れば、乳の出ない牛の何倍ものお金になるでしょう。 ジャックは大喜びで豆を拾い集めましたが、やがて困ったことに気付きました。牛の鼻から伸びた蔓がぐんぐん天に伸びて絡み合い、いつの間にか木のようになっていたのです。 一体どうしたものか、とジャックが途方にくれていると、ピーナッツをくれたおじいさんが呟きました。 「おぉ、いい頃合いだ」
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おじいさんは、どのみち牛を買ったらピーナッツを与えるつもりだったとジャックに伝え、木によじ登りはじめました。 「坊や、牛が無断で豆を食べたことは許す。だから金の成る木のことは内緒にするんだぞ」 ジャックは渋面を作りました。こんなに目立つ木を、どう内緒にしたらいいのでしょう。 「木に登らない方がいいよ!」 咄嗟の思いつきでジャックは貰った本の挿絵をかざしましたが、おじいさんは振り向きませんでした。
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直ぐにおじいさんは見えなくなりました。すると牛が目を覚まし鳴き出します。モーと鳴けば鳴く程に蔓は短く細くなり、やがて跡形も無く消えました。 「おじいさーん!」空へ向かい叫びましたが返事はありません。 ジャックは諦めて牛を連れて町へ行きました。金の豆は大層な値で売れました。 「さぁ帰ろう。いや待てよ、このお金分のピーナッツを買おう。」 翌朝、ジャックの元には乳の出ない牛だけが残ったのでした。
- 完 -