グレイマンとの遭遇

私が今手の平に乗せているこの石… 一見ただの石ころだが私はこの石をめぐり三年前にある大規模な抗争に巻き込まれた。 三年前のあの日、私は一人旅行で沖縄の海を撮ろうと米軍基地の側をあるいていた。

ke-na

13年前

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買ったばかりのデジカメでパシャパシャ撮っていると、ちょうど米軍基地のほうから人影がこちらに向かってきた。 人通りも殆どない場所だったので不信に思って見ていると、だんだん近づいくる。 「軍人さんかなあ?それにしては色合いが派手なような…んん⁉」 少しづつはっきり見えてきた人影に私は目を疑った。 派手なアロハシャツ、赤い短パン、そして灰色の肌。 それは確実に… 超有名宇宙人、グレイマンだった。

アコヤ

12年前

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グレイマンは私に向かって真っ直ぐに歩いてくる。 「どうしよう、怖い…!」 逃げようとしたがダメだった。まるで体が金縛りにあったようにピクリとも動かない。 やがてグレイマンは私のすぐそばまで来て顔を覗き込んできた。黒目しかない大きな瞳からは何の感情も読み取れない。 「それをください」 無機質な声が頭に響いた。 「それをください」 声は聞こえるが彼のおちょぼ口はまったく動かない。それって…?

hayayacco

12年前

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「それはあなたがもっているもののことです」 英語を直訳したかのような無機質な返答に、カメラのことだと気がついた。 「これはわたしのものになることが可能であるか?」 直訳風日本語を少しかわいいと感じながら、逆らうのも怖いので渡してみる。 「これは永遠をうつすのですか、それともうつしたものが永遠になるのですか」 哲学的な質問だ。 これには頭を抱えた。

12年前

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「どちらでもありません。写るのは今という一瞬ですし、写したものがいつまでも残る保証もありません」 ちゃんと通じただろうか。 グレイマンは何かを考えているようだった。 「あなたに良いものをあげます」 そう言って私の手の平に何かを落とした。 ただの、石ころ…? 「あなたは大事にします」 「何ですか、これは?」 言い終わらないうちに 「いたぞ!」男の声に気を取られ、振り向くとグレイマンの姿はなかった。

髭鬘

12年前

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私の手の中に残ったのは小さな石ころだけ。 おまけにさっきグレイマンを指差してかけてきた男5人組に取り囲まれてしまった。 「あの男と何を話した」 取り囲まれるなりそう言われた。 「え、私は別に……」 何だか見せない方がいい気がして、石ころを持っている手を固く握った。 「答えろ」 「……カメラを……差し上げました」

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石ころを握る右手は、不自然になっていないだろうか。 先の尖ったそれは、固く握ると少し痛い。 「本当にそれだけか」 男の一人が、私に詰め寄るように問いかける。 私は、迷うことなくはい、と答えた。 別の男が鋭い目つきで私を睨む。 「何か渡されたりはしていないんだな」 どき、と心臓が跳ねた。右手にじっとりと汗をかく。 これのことだろうか。 一体、こんな石ころに、何があるんだろう。

pinoco

10年前

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「…いえ、何も」 そう言うと、顔を見合わせて何やら話し始めた。 なんなんだろう、この人達… しばらくしたら「おい!いたぞ!」とどこからか聞こえてきた。すると、男たちは声のする方へ走って言ってしまった。 一人でぽつんと立っていると、 「やっと行ったね。大丈夫?」 びっくりして振り返ると、さっきの男たちと同じ様な服装の人がいた。 「あなたは誰なんですか?それと、この石について何か知っているんですか?」

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──このとき。 なぜ私は手の平を解いて、石の存在を口にしてしまったのか。 なぜ背後の人物が何者であるか疑わなかったのか。 答えは、当時の自分に聞いてみないと分からない。ただ、抗争はここから始まった。それだけは確かで、私が石を明るみに出した現場は、グレイマンによって興味本位に撮影され、写真はマスコミにリークされた。以来、私は全世界から追われる身である。 ちなみに抗争は、まだ終息していない。

おやぶん

10年前

- 完 -