未完ノベル #19457
「今宵は貴女の血を頂きに参りました」
満月を背に逆光の影が部屋に伸びる。にい、とひいた口の端から鋭い牙が光る。
明け方の森の洋館。
口を拭い、テラスへと舞い降りたのは、1人の青年。その背には蝙蝠の羽が生えている。
「血なんて美味しいんですか」
「…お前にゃわかんねぇよ」
部屋の中からでゆったりと九尾を揺らす、人影が現れる。
不法侵入者め。
吸血鬼のエドは、九尾に向かい舌打ちした。
- 1 -
「あっ、メールだ!」
九尾ハンは懐からスマホを取り出す。
「舌打ちの着信音があるかよ。あとお前何気にケータイ持ってんのな」
「私は美味を求め、日々世界を駆け回る身だからね」
逆にエドは持ってなさそうだよね、スマホをケータイと言っちゃうくらいだから。ハンはにこりとした。
「おんなじだろ」
「違うよ」
「…細かい女は嫌われんぞ」
「うっさい、蚊男」
「吸血鬼だ」
あの〜…
「私、お邪魔ですね」
- 2 -
どこからか声が聞こえた。
なんと、ハンのスマホからだった。
「……メールだよな?」
「のはずです」
不審がっていると、そのスマホは構わずハン達に話しかけてくる。
「初めまして。私、YH-902と申します。所謂付喪神です」
「いや待て。付喪神って確か、何十年も経った物に宿るんだろ?」
「はい。私の基盤に使われてる貴金属は、昔装飾品だった物のリサイクルですから」
エコロジーなスマホが現れた。
- 3 -
「…何故嬉しそうなんだ?」
スマホを抱いて小躍りするハンは、問われて回転の流れで如何にもコレダカラというポーズで返す。
「時代はエコ!エコってればイイネもつくのよ!」
「現代っ子か!」
「で?エコなスマホさん、何の御用かな?」
「お伝えした様に私、元は装飾品でして。エド様はその頃の主なのです」
「何の装飾品?」
「生娘の服だけ透けて見える眼鏡の額縁です。黄金の」
「…去れ、成金エロジジー蚊男」
- 4 -