「今宵は貴女の血を頂きに参りました」 満月を背に逆光の影が部屋に伸びる。にい、とひいた口の端から鋭い牙が光る。 明け方の森の洋館。 口を拭い、テラスへと舞い降りたのは、1人の青年。その背には蝙蝠の羽が生えている。 「血なんて美味しいんですか」 「…お前にゃわかんねぇよ」 部屋の中からでゆったりと九尾を揺らす、人影が現れる。 不法侵入者め。 吸血鬼のエドは、九尾に向かい舌打ちした。

コノハ

11年前

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「あっ、メールだ!」 九尾ハンは懐からスマホを取り出す。 「舌打ちの着信音があるかよ。あとお前何気にケータイ持ってんのな」 「私は美味を求め、日々世界を駆け回る身だからね」 逆にエドは持ってなさそうだよね、スマホをケータイと言っちゃうくらいだから。ハンはにこりとした。 「おんなじだろ」 「違うよ」 「…細かい女は嫌われんぞ」 「うっさい、蚊男」 「吸血鬼だ」 あの〜… 「私、お邪魔ですね」

ゆりあ

11年前

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どこからか声が聞こえた。 なんと、ハンのスマホからだった。 「……メールだよな?」 「のはずです」 不審がっていると、そのスマホは構わずハン達に話しかけてくる。 「初めまして。私、YH-902と申します。所謂付喪神です」 「いや待て。付喪神って確か、何十年も経った物に宿るんだろ?」 「はい。私の基盤に使われてる貴金属は、昔装飾品だった物のリサイクルですから」 エコロジーなスマホが現れた。

nameless

10年前

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「…何故嬉しそうなんだ?」 スマホを抱いて小躍りするハンは、問われて回転の流れで如何にもコレダカラというポーズで返す。 「時代はエコ!エコってればイイネもつくのよ!」 「現代っ子か!」 「で?エコなスマホさん、何の御用かな?」 「お伝えした様に私、元は装飾品でして。エド様はその頃の主なのです」 「何の装飾品?」 「生娘の服だけ透けて見える眼鏡の額縁です。黄金の」 「…去れ、成金エロジジー蚊男」

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