この恋は始めません!

君がよく読んでる漫画ではさ、 主人公の一番近くにいる彼は、絶対に主人公とは結ばれないよね。 だから、 君はきっと、 僕の気持ちには気づかない。

knock

13年前

- 1 -

ある日突然、知らない男子生徒に言われた。 うちの高校の制服を着ているし、校舎内でのことだ。まあ、うちの学校の生徒には違いないのだろう。だが、絶対に、断じて、間違いなく、知らないヤツだった。 気味が悪かったので、反笑いでかわして部室へと急ぐ。そうそう、この度ついに漫研部にも部室ができたのだ!ああ、嬉しい。 しかし。何故私が好きな漫画あるあるを知っていたのか。やはり不気味だ。漫画と現実は別物だ。

- 2 -

それにしてもストーカーか何か? いきなり初対面で「君はきっと僕の気持ちには気づかない…」怖すぎるわ 今度から友達と一緒に居ないとね。 1人だと危ない危ない さっ、気を取り直して漫画の続きでも描こうかな? 続きを描こうとしたその時ガラガラとドアが開いた 部室には自分1人 とっさにペンを片手に身構えた…

13年前

- 3 -

「あれ、みのり一人?」 入ってきたのが友人である事に、私は胸をなで下ろす。 「うん、まだ他の部員は来てないや。カヤこそどうしたの?部活は?」 友人のカヤはバレー部所属。私と違ってバリバリの体育会系だ。 「あ、さっきさー、窓越しにチラッと見えたんだけど、みのり琴音先輩と2人っきりで話してなかった?」 …琴音先輩? あの理解不能男子は琴音という名前で先輩なの? 「琴音先輩って有名な人なの?」

Beatle

12年前

- 4 -

「うーん、まぁ時折うわさになったりするよね」 早めの部活上がりなカヤは私の向かいのパイプ椅子に座ると首に掛けていたスポーツタオルをはずして枕にすると、寝る姿勢にした。 「まさか彼氏だっりぃ?」 わわわっ!…何言ってるの⁉ 確かに顔はマシな方だったけど、ちょ、マジでそれは無いって! 「そ、ならいんだけどね」 「何か知ってる?」 「あまりいい評判は無いね。たしか本館のD組だったんじゃないかな」

Air

12年前

- 5 -

D組と聞いただけで顔を顰めてしまいそうになった。 先輩の学年はただでさえ荒れている人が多いというのに、D組はその中でも問題児が集められていると有名だからだ。 パッと見た感じ不良のような印象は受けなかったけれど、あんな訳のわからない台詞を初対面の人間に云うのだからやはり少し変な人なんだろうと私は勝手に納得した。 しかしカヤはまだ興味津々。好奇心溢れる表情で私が何か云うのを待っていた。

- 6 -

「本当に付き合ってないの〜?」 「だから無いって」 私は慌てて頭を振る。ふーんとカヤつまらなそうにしたその時、部室の扉がガラガラと音を立てた。 開き切った扉には先ほどの琴音先輩なる人が仁王立ち。 もしかして……怒らせた? 「僕の気持ちは本物だ。答えだけでも聞かせてくれ」 彼は神妙な面持ちでそう言った。 えっと……告白?

カサヤ

11年前

- 7 -

私の代わりにカヤが息を飲んだ。私は驚いた、というよりは呆れた。 「あれが、告白?あんな痛い不審者みたいな?」 琴音先輩は神妙な顔つきになり、悪いのはまるで私のように言った。 「僕の一世一代の想いを馬鹿にしないでくれるかい?」 「いや、馬鹿にしてるのはそっちでしょ。私を何だと思ってるの?あんなのでいけると思った?呆れるわ」 「ちょっとみのり!?」 カヤが止めに入る。私も口を閉じた。

Ringa

10年前

- 8 -

「つまり、今は気分じゃないのか」 照れ屋さんも可愛いと納得顔の先輩。 「はあ?そんな問題じゃない!」 人の話をちっとも聞かない。頭おかしいんじゃないの。 「あの〜」 カヤがそっと手を挙げる。 「彼女を本気で好きなら身を引いてください。貴方を怖がってるんで」 カヤの一言に先輩が唸る。 「でも……彼女に恩返しがしたい」 急に子どものようになる。いてもいられず私は逃げ出した。 先輩の卒業まで半年。

ゆりあ

8年前

- 完 -