想いは交わることを知らない

なぞなぞをひとつ出してあげる。 問題、僕が一番悲しいことってなんだ?

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わからないのかい? 教えてあげる。 僕は自分が誰だがわからないんだ。 何も…何も…何も…。 でもね、一つだけ嬉しいこともあるんだよ? それはなーんだ?

華吹 豪

12年前

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答えはね、 君が側にいてくれて、 君の笑顔をこうして見れること。 君は何も分からない僕に いつもいつも お月様みたいに優しく振る舞い、 お日様みたいに笑顔で接してくれる。 僕はそれが嬉しい。 何も思い出せない、 何も分からないってのは、 まるで真っ暗闇の中を 目をつぶって歩いている様なんだ。 だから、 君がいてくれることが 僕の一番嬉しいこと。 でもね。 僕、一つ不安があるの。わかる?

真月乃

12年前

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お月様みたいな優しさとお日様みたいな笑顔。こんな君とこうしていられることが僕の幸せなんだ。 その僕の唯一の光である君が、いつしか僕の元から離れてしまうことがあるかもしれない。 これが僕にとって一番の不安 真っ暗闇の僕には、君っていう暖かい光がなければ前を見ることが出来ないんだ。

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ゴメン、 君には与えてもらってばかりだね。 御返しをしたいのに、 僕が何者かもわからないから、 何ができるのかもわからない、 本当に、悲しいし 不安で どうしようもないよ。 君の笑顔、優しさの源はなんだろう? こんな僕が、 君に、君のためにできる事は、 何かあるかい?

ジミー☻

11年前

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じっと彼の話を聞きながら、少女は現在の自分が非常に厄介な状況に置かれている事を瞬時に理解した。 何故なら彼とは完全に今日が初対面であり、その素性はおろか、名前さえ知らない、歴然たる赤の他人だからである。 目の前の見知らぬ男が私の返答をじっと待っている。その瞳はまるでガラス玉のようで、そこには人格というものがなかった。少女は今にも吸い込まれそうな瞳に身動きがとれず、背中から冷たい汗が吹き出した。

minu

10年前

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目覚めたのはほんの一週間前。 どうやら重症だったらしい。 目が覚めて最初に感じたのは、足の感覚が全くと言っていいほどになかったことだ。 両親を名乗る二人の夫婦が私のもとにやってきたけれど、その人たちが誰なのかわからなかった。 この人も私の知り合いだろう。 「名前は?」 彼はビクッと体を震わせた。 「細川…慎太郎です」 どこか聞き覚えのある名前だ。 「私との関係は?」

futa

10年前

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その質問をした瞬間、細川と名乗った男はうつむき、口を閉ざした。 「あの…」 いたたまれなくなり、私が口を開いたのと男が顔を上げたのは同時だった。 「僕、君を守れなかった。その足だって」 そう言ってまた俯いてしまった。 「そう。」 私はベッドに体を横たわらせ、外に目をやる。 悔しいくらいの青空。なにも思い出せない私を嘲笑っているように思えて仕方がない。 青空に飛行機が雲を引いていく。

杏蕩れ

10年前

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「じゃあ私を殺して」 たじろぐ男を真っ直ぐ見つめる。 こんな状態で生きていても仕方ない。 「殺して」 もう一度声に出す。 男が泣き笑いのような、変な顔をしながら私を見つめる。暫くして低くわかったと呟いた。 男が私の頬を撫でる。首筋に置いた手に力が込められていく。苦しい、でもそれでいい。 急激に落ちる意識の中で最期に聞こえたのは泣きながら愛してると言う男の声だった。

alice

9年前

- 完 -