星に願いを 月に祈りを 君には愛を。 空に歌を 大地に雨を 君には夢を。
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謳う言葉は君には決して届かない。 どれだけの願いをかけたところで、どれだけの得を積んだところで、奇跡の夢を見るにはまだ早く、絶望感は黒く身体を染めていく。 それは定められた縁。 定められた摂理。 「また、来世で会おう」 強がって口に出すものの、叶えられることのない夢に齷齪と足を止める毎日。 今夜はお眠りなさい。 いい子だから。 きっと、詩があなたを癒してくれる。
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あの時君はそう言った。 だから私は瞼を閉じる。 ひと時の癒しのため。 だが、君の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え...どうにも君を忘れられそうにない。 会いたい。話したい。抱きしめたい。 けれど一つも叶うことはない。 この叶わぬ夢をいつまで追い続けるのだろう。 いつまでも続く真っ暗な闇。 その闇の中で君の言葉を信じてまた詩を謳う。
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海に希望を 雲に未来を 君には勇気を。 山に四季を 川に流れを 君には想いを。
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じゃあさ、ひとつ教えてよ。 動かなくなった時計には? 腕のいい時計職人もお手上げだって。 参ったね。 夢で、会いたい。
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動かない時計には思い出を。 さあどんな思い出を語ろうか。 針は止まっても時は流れゆく。 君への想いもいっそ共に止まればいいものを。 僕はこうして来世にもいけず、ただ今夜も夢に逃げ込んだ。 夢の中で僕は謳う。 君に届けと恋の詩を謳う。
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夢の中で2人永遠に幸せになれたらいいのにとどれだけ考えただろうか。 愛しくて会いたくて切なくて、君が瞼の裏に焼き付いてまた今夜も僕を哀しみの闇に誘う。 幾度と無く回り続ける時間と幾度と無く謳い続ける詩。 足早に過ぎ去って行く時の流れに相対して僕の瞳に映る物全てがスローモーションで、君への想いだけが置いてけぼり。 降り積もった雪が溶けて僕の頬を伝う。僕の君への想いも溶けてしまえばいいのに
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だけど、君への想いは雪には溶けない。 なんで? なんで? なんど、聞いたか、わからない。 なんど、自分に問いかけたか、わからない。 教えてよ。 夢の中の自分に問いかけたけど、わからない。 でも、なんでかは、わからないけど。 よく、わからないけど。 あいたいよ。
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君の姿だけが朧になっていく 君への想いだけが残る 今どんな表情をしているの よく見えないよ 進めば進むほど小さくなっていく君の姿 夢の中でさえ君は置いて行ってしまうんだね 名前に音を 心臓に鼓動を 君には笑顔を。 肺に空気を 瞳に虚像を 僕には死を。
- 完 -