優しくて暖かい涙。
痛い、痛いよ
やめて、痛いよ。
叩かないで、物を投げないで。
私達…“親友”だったじゃん
やめて、私を
“虐めないで”
- 1 -
いつからこんな関係になってしまったの?
どうしてこんな関係になってしまったの?
私が悪いの?
君が悪いの?
もう...分からないよ
- 2 -
涙が零れる。
物を投げられて、痛いからじゃない。
一緒に過ごした楽しい日々を思い出して泣いてるの。
あなたの事を私が一番よく知ってると思ってた。
どんな時も私に笑いかけて、励ましてくれたじゃない。
そんなあなたが、こんな事をするなんて。
違う、あなたはこんな人じゃない、
きっと何かに騙されて操られてる。
私が助けてあげなくちゃ
私が…
私は涙をふいて彼女に物を投げ返す。
「ねぇ、あなたは…」
- 3 -
「ねぇ、あなたは誰?」
私の問いかけに無言で答える。
否、暴力が答えか。
"私の知ってるあなたでないなら、
あなたの皮を被った他人なのね。"
私は心で小さく決意を固める。
そこからが私の逆転劇。
- 4 -
物を投げてくるのも無視し、立ち上がってあなたの席へ向かう。
置いてあった筆箱をぶちまけて、カッターを握り、手首を切る。
流れた。
あなたの机に、血が。
「なにしてんのよ!」
慌てて止めにきたあなたに、私はキスをした。あなた、唖然。周り、どんびき。
「私が憎い?嫌い?」
口を離して尋ねた。
当たり前でしょ、と目も合わせずに言うあなたに私は言った。
「じゃあ、私もあなたが嫌い。」
- 5 -
一瞬、何かを言いかけて口ごもったあなたの目の前で、私は腕をざくざくと切り続ける。
不思議と、痛みは感じない。流れる血が、床を赤く染めてゆく。
「いいかげんにしなよ!」
必死にカッターを奪い取ろうとするあなたの顔は、まるで泣き出す寸前みたい。
あなたの飼ってたうさぎが死んだとき、私が先輩にふられたとき、同じ表情をしてたよね。肩にこつんと額をあてて見られないようにしてたけど、私、ずっと気づいてたよ。
- 6 -
「嘘だよ」
と私は言う。
「嘘つき。私も、あなたも」
「何よ、何のことよ。あんた頭おかしいんじゃないの!?」
やっぱり、他人なんかじゃない。あなたは、私の知ってる『あなた』だよ。
「大丈夫」
血まみれの手で、近づいたあなたの手を握りしめる。思わず逃げようとする手を、絶対離さない。
温もりが伝わってくる。いつも、こうやって一緒に帰ったね。そこからこんなところまで来てしまった。
私は思い出す。
- 7 -
私達の仲がこんなにも捩れてしまったのは、ある些細な噂が原因。
あなたがずっと想い続けている"彼"が、私を好きだっていう噂。
私はなんとも思ってないって言ったけど、私の言葉はもうあなたに届かなかった。
今なら届くかな?
「嘘ついてごめんね。」
今にも泣き出しそうなあなたに、私は微笑む。
「私はあなたが大好き。」
私が好きなのは"彼"じゃない。親友のあなただよ。
涙が頬を流れた。
- 8 -
涙の理由はわからない。
もう、そんなことどうでもいい。
「わたし……っ、ずっとあなたが好きで……っ」
涙がどんどん溢れる。言葉が紡げない。
「それでもっ……伝え、られなくて……っ」
あなたの瞳にも涙が溢れている。
あなたの、誰にも聴こえないくらいの微かな声。
でも、私は確かに聴いた。
“嘘ついてごめん。
……私も、あなたのことずっと好きだったよ。”
あの頃と同じ、優しい笑顔で。
- 完 -
作品情報
優しくて暖かい涙。
#145
- リレー期間
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1ヶ月