ここのつの音、僕はなにを思ふ
ほとり
なみだが
零れ落ちて
僕の首もとを
滑っていく感触
心地がいいと笑う
きみは夢に沈みこみ
その瞼は開かないまま
かなしみにくれた僕
きみを救えるのは
僕しかいないと
傲慢な思いを
知らぬまま
ぼくらは
ほとり
- 1 -
ぐにゃり。
歪な
それは
僕の
君への
気持ち。
戸惑う君の
瞳そして
渇いている
その唇を
濡らし
たい。
- 2 -
ぶわり
目が合ったの
その時ではない
それは一陣の風なのだ
僕と君の間を吹き抜けた
僕たちはそれを知ったのは
トンボ玉或いはBB弾かしら
君のなみだは誰にもわからない
僕の心がそれを痛みと感じるだけ
- 3 -
どろり
暗黒の過去や
血みどろの心や
見窄らしい根性
生きれる世界に
理想だけを求めて
そうきっと快感に
溺れる瞬間だけに生きて
いつまでも、何もかも
諦めたままでいよう
何が怖いのか
失うのは何か
僕を殺すのは何か
愛したいのは誰か
- 4 -
ぐさり
君の言葉が
こころにささる
僕の全てを切り裂く
君のことば君のひとみ
君は一体何を思っていた
考えるたびに傷は深くなる
僕の心に巣食うのは腐った林檎
誰が戻してくれるのだろう
誰が助けてくれるのだろう
僕はねがう君にねがう
腐った林檎に
ナイフを
つきたて
君は笑う
- 5 -
さらり
ページが捲られるように
時間は過ぎ去っていった
そして君だけが残ったの
悲しいの?寂しいのかい?
君はこの世界で一番嘘吐き
悲しいなら笑わないでよ
苦しいなら僕に分けて
そうやって僕の朝は
君を失って明ける
- 6 -
つるり
その手を
離れた感触
不安の高鳴り
過去には戻れず
ゆびさき悔やめど
劇的な悲劇の無言劇
形容し難いオノマトペ
万有引力に逆らう術無く
どんな人でも林檎と同じで
かたちあるものが齎す結果は
あとにもさきにも変わらず
故事成語に従うでもなく
俄に出ないイディオム
喜劇の寸劇は現代劇
つまさき踏み締め
未来はただ一つ
崩れる平衡感
滑った感触
その足で
つるり
- 7 -
ぐらり
世界が傾く
海は空に沈む
破壊は再生に繋がる
僕らは嘘を信じてた
唯一確かな物だから
世界が崩れ世界が回る
目眩がして僕等は立ち止まる
嘘は真実には叶わない
どんなに残酷な真実も
真実であれば美しくて
嘘はどんなに飾っても
虚飾に過ぎない
歪な僕等は
空に沈む
ぐらり
- 8 -
くるり
君は舞う
哀しきかな
その美しさや
たとえるならば
水にひろがる波紋
或いは水面に映る月
君が無邪気に笑うから
消えてなくならぬ様
両腕広げ僕も笑む
ふたりで消えた
闇の深い場所
音のない処
僕も舞う
くるり
- 完 -
作品情報
ここのつの音、僕はなにを思ふ
#12072
- リレー期間
-
5ヶ月