《架空読書会のお誘い》 実在しない本のタイトルをテーマに、空想から感想、批評、考察を論じる。その様な企画があるそうで、楽しそうなのでこちらでもやってみたいと思いました。 ルールは、他の人の話を否定しないこと、だそうです。 (例:Aさんが〝猫の死が悲しかった〟と言ったのに、Bさんが〝猫は死んでない〟などとするのはNG) 今回の架空書架は 『瓶詰あぶくプルトニカ』
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否定しないのがこの読書会のルールだけれど……この本は酷かった。 瓶詰めになったプルトニカのあぶく……タイトルから、この物語が戦争モノだとどうして気づく事ができなかったのか。残虐な拷問や体罰の描写が多いので、平和慣れしている読者にはお勧めできないと思った。 だが、読み進めるうちに平和を生きる今の人々にこそ読んでほしいと思い直した。戦争を題材にしているが、作者の真意は平和の渇望だと気付いたからだ。
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この作者の小説は全部読んでるんです、わたし。でも、今回はとくに先生の味が出ていますね。 作者自身の戦争体験に裏打ちされたメッセージ性の強さが持ち味だと思うのですが、この作品は強烈でした。 一番胸に来たのは、反逆罪で職を失ったアントニカが海に飛び込むところです。プルトニカは彼を憎んでいるはずなのに、彼を助けに身を投げ打つ彼女の気持ちを思うと、悲しくて…。 このシーンは何度も読み返したくなります。
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投獄された人々がガス実験送りになるところや、密林で愛馬を食べなくてはいけないシーンなど、目に見えるような詳細な描き方は迫力がありました。 作中の人間石鹸の話って嘘かな、って思ってたんですが、実際行われていたことだったんですね。もう、恐怖しかありません。 プルトニカの言葉が何より印象的でした。「罪悪感に救いはないんです。なぜなら、疑うことにきりはないから」 学生時代に読んでおくべきだったかもな。
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