「閣下!また奴らが現れました! 「ぐぬぅ、またか、またなのか!いつもいつもあいつらは…」 とある悪の組織のボスは頭を抱えていた。ヒーローどものせいで仕事が全然進まないのだ。なんでも世間では悪は必ず正義によって滅ぼされるらしい。どうしたものか。 「閣下!ここは逆転の発想です!」 「何?」 「閣下がヒーローになればよいのです!幸い今ブラックの枠は空いております!」
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「よしそれで行こう!してどのようにブラックとして仲間入りしたら良いか考えよ」 「知ってるなら私めがヒーローになりたいところ!」 「何っ?!この世を悪に染めんとする暗黒組織の手下がヒーローになりたいだと?!」 対ヒーロー用の光の玉が指先で大きくなる。星の半分を吹き飛ばすとかないとか・・・ 「 ひぇっやめっ(何て勝手な!)じゃまずヒーロー達に軽くやられて改心し仲間になるパターンは!! 」
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鬨の声で、悪の組織のボスは実行に移した。 「でたな怪人!」 「私がランボルギーニ閣下、組織のボスである」 こそこそ話がする。 (予定ジョニーウォーカー黒将軍じゃなかった?) (ボス展開早すぎウケる) (俺今月給料日まだだよ) (やっちゃえやっちゃえ) 「四人合体エクストリーム・光殺放」 やられたあぁぁぁぁ! 爆発音が鳴り響く。 「この度、心を入れ替えました。これは黒の紋章、ブラックの証」
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「…よわ」 眉を顰たブルーにほかの二人も頷いた。 「…そうか、ではお前も今日から我々の仲間だ。よろしくな、ブラック」 逆にレッドはランボルギーニ閣下改めブラックに優しく手を差し伸べる。 ((((まあ、君を倒したからもう仕事はないんだけどね!)))) 正義のヒーロー達が裏で考えている事にも気づかない元悪の親玉は喜んでその手を取った。 ここから閣下改めブラックのパシリ…苦難の日々が始まった。
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青「ブラック、ポカリ買って来い。呉々も赤いのはダメだ。よろしく」 ラジャ! 黄「ブラック、作戦会議の後は夜食にカレーだから、よろしくですたい」 カレー?…ラジャ! 桃「ブラック~、肩揉みして~。変なコトしたらセクハラで…殺す♡」 ぶっラジャ~、でへ 赤「ブラック!俺はリーダーとして君に早く仲間と心を一つにして欲しい!そこで、基地の掃除は君の任務だ!」 ら…らじゃ…(眉間がピクピク…)
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数日後、元手下はブラックの事が気になり、ヒーローの基地に向かった。 元手下が陰から覗いてみると… 「パシブラ、飯!」 「パシブラ、肩もんで〜!」 「はいは〜い♡」 (おいおい、名前に『パシリ』ついちゃってるよ。ったく、しゃーねーなー) 元手下は壁を小さく叩いた。するとパ…いやブラックはそれに気が付いた。 「お〜お前か〜。久しぶりだな〜」 「お〜じゃないっすよ!何爽やかそうな顔してるんすか!」
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「掃除も仕事の一環なのだよ。分かるかね?」 「つーか、パシられてるだけじゃ…」 「何を言うか!」 ブラックは顔を真っ赤にして怒りだした。 「わわっ…声がでかいっす。それよりボスに提案が」 「なんだ、言ってみよ」 「はい、このままではボスがあまりにお気の毒ですし、給料だって…その…だから、やはり悪は悪らしく、ここを乗っ取るっつーのはどうっすか? 」 「ふむ…」 ブラックはしばらく考えて言った。
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「では乗っ取るための方法を考えよ」 「…レッドをぶっ倒して、ボスがリーダーになり代わっちまうのはどうすか?」 「そうか…レッド…さんを、倒…いや倒させていただいて…」 「それかまず、イエローを先に抑え込むとか」 「イ…イエローさんを⁈あんなにご飯を美味しく食べる人を…そんな」 「…ボス?あー、それかピンクを」 「ピンク様に手を出すなああああ‼」 パシブラのコーンスクリューパンチが元部下に炸裂した。
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「この際なんでもいい!俺は今の日常が好きだ!こんなに忙しくても、パシブラでも、俺は満足しているんだ!!」 「へっ?それでは……」 「今日を持って、我が組織は解体する!」 「え?そんなぁぁあ!!」 てなわけで、俺は閣下を辞めた。 本当はパシられるのは嫌いだ、だけどこいつらとならパシられてもやっていける気がする! 「ブラック、今日も頼むぜ」 「ああ、任せろ!」 そして今日もパシリの日々が始まる!
- 完 -