僕は翔太。中学1年、学級委員の補佐、議員をしている。 頭はまぁ、普通。 これは僕のなんの変哲もない日常を書いた物語
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「では、これから学級会を始めます‼︎」 学級委員の相川みのりは大声でそう言うと教卓をバンと叩いた。騒ついていた教室がしんと静かになる 「いいかお前ら‼︎ 今日はこの50分という限られた時間で三つのことを話し合って解決して決めなければならない‼︎ その準備はできているのか⁈」 「あったりまえだ‼︎はやく進めろってんだおらぁ」男子が怒鳴る 「よぉし、んじゃいくぞー、まず最初のお題はこれだあぁ‼︎
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「まずは、来月末に行われる文化祭の出し物についてだ!お前ら何がやりてぇ!?案を出してみろ!」 「委員長!!」 教室の真ん中あたりの席から挙手があった。 「何だ真中!!」 「お化け屋敷とかどうでしょう!?」 まばらな拍手と賛同の声が上がる。しかし、それを委員長が一喝した。 「この文化祭の出し物は校長に審査され、表彰される事になる!!副賞は修学旅行先の指名権だ!お化け屋敷で取れるか!!」
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「なるほど!流石は委員長だ!」 「誰か他には‼︎」 「あ、あのぉ…」 教室の端の方から細い声が聞こえた。 「なんだ、隅!」 「た、例えば…皆で何か凄いものを作って展示するとか…」 「おおっ!それはいい!」 「よし!決まりだ!我がクラスは展示とする‼︎」 という訳で、歓声と共に開始僅か7分で文化祭の出し物の方向性が決まった。 先生は窓際で、のんびり茶を啜っている。 「では、次の議題はこれだあっ!」
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「私らのクラスにはスローガンってやつがない!ほら、三組が黒板の上に貼ってる『明るく楽しく元気な三組』とかいうアレだ。三組のヤツはテーマが偏っててどうかと思うが、クラスの士気を高めるのにはもってこいの物だ‼︎」 また拍手が起こる 「さすが委員長、他学級の観察にも余念が無い!!」 「静粛に!そこで、うちのクラスでも案を募ろうと思う‼︎菅原、なにか無いか?」 指名された菅原は少し考え、発言する。
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「そうだねぇ、なんかリズムがあるやつがいいかもね。クラスの士気を高めて、且つ他のクラスを圧倒する様なものがいいねぇ」 そう言って少し考え込んだ。 「早くしないか!授業は残り37分!我々の青春には一刻の猶予も残されていないのだぞ」 委員長の怒声が飛ぶ。 「委員長、ぴったりなの思いつきました!」手を上げたのは剛力。 「言ってみろ!」 「1組は!退かぬ!媚ぬ!省みぬ!というのは如何でしょうかッ」
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おぉ、とクラス全体から賛同の声が上がった。 「成る程!退かぬは森羅万象魑魅魍魎あらゆるものに対して退かない決意!媚ぬは他者に動じず己の道を貫き通す信念!省みぬはあらゆる過去を全て捨てる覚悟!全て我らに必要な物である!素晴らしいスローガンだ!皆!剛力に拍手を送れ!!」 バチバチバチバチィィ!! いいぞォォ!!剛力ィィ!! お前は俺達の目標だァァ!! ありがとうッッ!剛力ィィ!! 漢だぜ剛力ィィ!!
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「さぁここで問題がある!俺達は展示をすると言った!だがしかしっっ!何を展示するかはまだ決めていないぃ!そこでだっ!校長を感動のあまり昇天させるような展示物案を募る!何かいい案はないかぁ!」 「はいっ!」 「よし前田!言ってみろ!」 「校長の胸像を作るのはどうでしょうかぁっ!」 「なんて素晴らしいんだっ!他にないか!よし!決定だ!前田に拍手っ!」 バチバチバチバチィィ!!!
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「あなた、あの伝説の…」 十年後。校長の胸像を眺める僕は、生徒に声をかけられた。 「ああ、うん」 「うわあ、握手してください!」 相川みのり率いた1組は今、伝説となっている。ある意味、「組」として義侠を貫く漢たちの熱い血潮は、この学校の風紀を正し、そして国を変えた。今や彼女は首相として国を率いている。 そして僕は、 「警視総監と握手しちゃった!」 やはり彼女の下で、日本を守っている。 実に平凡だ。
- 完 -