生き地獄
死のうかな
ふと口から出た。
止めてほしかったけど、今はもうそんなこと求めてない。ただもう何もなかったときに戻りたい。この痛みが生なら、もう息もしたくない。痛みかどうかも麻痺してる。
生きて行くことは、一生人と関わるってこと。そばに家族もいない。家族以外心を打ち明けられる人はいない。
だからって今すぐ逃げ出すことも出来ない。一度足を踏み入れたら、記憶と共に生きなきゃならない。
- 1 -
腕の脈を切った。
血がどくどく流れる。あぁやっちゃった。本当に死ぬんだ。ふと、過去が見えてきた。
- 2 -
ー おかぁさぁーん!! おとぉさぁぁん!!
子供の泣き声。
ー う、うぇ、っ死なないでぇ、、、
辺り一面の鮮血。
動かない父と母。
ー 近所で一家惨殺だって!
ー あれ、娘は助かったそうだよ。
ー そうなんだ?なんでも犯人は隣人らしいぜ。
いつも優しかったおばちゃん。
ー どこに隠れてるんだぁぁい?
狂気に歪んだ顔。
私はあれから「知っている人」が怖い。
- 3 -
ああ、そうだ。私には家族はいなかった。
生きていくことに疲れて、何が現実なのかわからなくなってる。
湯船に片手を。
赤が。溢れる。
知ってる人が怖い。
わけ知り顔のカウンセラーも怖い。
あのとき、私だけ生き残ったことに必ず意味があるなんて、みんな勝手なことばかり。
死なせて。生きてる意味はない。
- 4 -
俺はもう、何もかも嫌になったんだ。
人関わること、全てに‥。
最近は、眠れないから、睡眠導入剤を飲んでいる‥。
これを、酒で飲めば死ねるかな。
楽になりたい‥。
飲んでやろうか‥。
と飲んでしまった。
そこからの意識はない‥。
ずっと、夢の中をさまよっている‥。
- 5 -
さまよった夢の中でいろんな
事がメリーゴーランドの様に
回り、遠い記憶からやがて
覚めることのない夢の世界に
行ったような気がした。。
- 6 -
さようなら。
遠退いた意識に、
そしてこの世界に、
私は最後の別れを告げた。
死ねば何も苦しまなくて済むのだ。
悲しいことも、辛いことも、全て無くなる。
とめどない人間関係のごたごたで思い悩む必要も、これ以上無い。もう二度と。
ああ、なんて幸せなんだろう。死ぬってことは。
さ
よ
う
な
私の頭が意識を完全に手放す寸前。
誰かの顔を、見た気がした。
- 7 -
父と母。
ありがちだけど、確かにその顔だった。
なんだ、生きてるんじゃないか。
今まで何処に行ってたの?
寂しかったんだからね。
待って。
行かないで。
私を一人にしないで。
後ろ姿が遠ざかる。
あぁ、やっぱり私には何もない。
美しい花畑を走る。
蝶が来るのを待ちながら、何処までも。
こっちに来てはダメ
私を置いてけぼりにした父と母が叫んでいる。
今そっちに行くからね。
- 8 -
お母さんへ
覚えてるよ。自害は地獄へ堕ちるって教えてくれたのはお母さんだったね。私ね、地獄に堕ちたよ。地獄で泣いたの、怖かったから。これから私はどうなるんだろうって。気がついたら私、裸んぼで身体中血だらけだったよ。そしてね、私を見てある人が言ったの。「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」って。どうしよう、私、次は男の子になっちゃった。またお母さんがお母さんだといいな。あとで会おうね。
- 完 -
作品情報
生き地獄
#4177
- リレー期間
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1年8ヶ月