「村岡くん。ごめんね、お待たせ。」

待つのは嫌い 周りには子供だって散々言われるけど嫌いなものは仕方ないじゃん 性格なんだから直せるわけないじゃん 高校に入って私は初めて告白された でも私は付き合う気がこれぽっちもなかったから即断った それなのに相手はしつこい 「好きになるまで待ってる」 とか 「もっと良い男になって振り向かせてみせるから待ってて」 とか 私は私の嫌いな言葉を連発してくるのに嫌気がさして思わずOKしてしまった

三日月

12年前

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「ねえ、なんで付き合ってくれることにしたの?」 村岡と付き合い始めて一ヶ月が経った。 その質問に私は無言のままミルクシェイクをすする。 「ちーちゃんって、ホントに俺のこと好きなのかなって最近思うんだ」 「ふうん」 好きでも嫌いでもないって言ったら、村岡どうするんだろう。 立ち上がって帰ろうとする私を、村岡は慌てて追いかけて来る。 「ねえ、待って!」 「嫌い」

pikke

12年前

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「…じゃあ、どうしたら好きになってくれるの?俺の何処が悪かった?」 「悪いけど」 私は振り返ると、 「村岡君を好きになるのは、とっても難しい」 「どうして?」 彼は少し、怒った様子で私を見る。 「私だってこの一ヶ月、待ったの。だけど村岡君は付き合い出した時から何一つ変わらない。もう、待ってられない」 「いや、待ってくれ!」 その一言が、決定的だった。 「もうこれ以上、私を待たせないで」

harapeko64

12年前

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私はその言葉を最後にその場去った。 予想通り彼は追っては来なかった。唖然と立ち尽くして私が戻ってくるのを"待って"いるのかもしれない。 我慢した方だと思う。一ヶ月も待つなんて私にしたら相当な努力だ。もしあの時付き合ってなかったら村岡君はどうするつもりだったんだろう。何か変わっていたのだろうか。 もう関係ないけれど。 学校では村岡君とはもう関わらなかった。ちらちらと視線は感じたが無視していた。

ハイリ

11年前

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待つのは嫌い。 何かが与えられるのを、ただ待っているだけなんて。それしか、できないなんて。 それは、なんと無力なのだろう。 村岡君は、付き合う前も、別れた後も、結局私の心変わりを待つばかりだ。 馬鹿じゃないの。 その“心変わり”が訪れないことは、誰より私が知っている。 彼がありもしない奇跡を待っている愚者だということも、誰より私が知っている。 だから、私は心から思う。 馬鹿じゃないの。

11年前

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それからも、村岡君はしつこく私の側をつきまとった。 つきまとうだけで、何かをするわけではない。何もしないのに、好きになれ、という。 土台無理な話だ。迷惑千万、甚だ腹立たしい。愚者は自身の無知を知らないからこそ始末に負えない。 さあ、今日も来たぞ。今度はどんな手を使い、近づこうとするのだろう。 本当に馬鹿。救えない。 救いたくもないけどね。

aoto

11年前

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「お…お待たせ!」 引き攣る笑顔の彼。 「何が?」 別に私待ってないんだけど。 待つの嫌いだからあなたを振ったんだけど? 「身長二センチ伸びた」 へぇ。 「が、学年末テストで二十位上がった」 そうなの。 「人参食えるようになったし」 子どもか。 溜息をつく私。 「何がしたいの?」 イラつく私に村岡君は答えた。 「何一つ変わらないと言われたので、変わる努力をしました」 …やっぱバカね、こいつ。

いのり

10年前

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「別に私は、そういうことを望んでいたわけじゃないの」 訳がわからない方向で努力をしている、バカな村岡くんに、私は冷たく言葉をかける。 ああ、きっと私の顔には今、何もうつってないんだろうな。 「努力したって、結局あなたはそのままよ。それが今、よく分かったわ。」 何が何だかわかってない様子で、ぽかんとしている彼。 なんだか、呆れを通り越して、だんだん虚しくなってきた。 だから、最終通告してあげる。

ゆづき

10年前

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一月経った。あれから村岡君が私に話しかけてくることはなかった。 なんなのよあいつ!急に態度変えて!私がこんなに待っているのに! 待っている そう私は待っていたのだ。ただ、私は何を期待していたのだろう。どう変わる事を望んでいたのだろう。嫌いな人間に期待なんてしない。私は変わらない村岡君をどこかで好きでいたのだろうか? 好きだった。彼は彼のままで良かった。本当に変わらなきゃいけなかったのは私か。

- 完 -