ストーカーって憧れる。 する方じゃなく、される方。 だってそれは、少なくとも俺に興味や好意をもっている、ということなのだから。 そんでもって、監禁とかされて手足とか縛った俺に手料理とかを『アーン』してもらうわけだ。 それが可愛い女の子だったらもう言うことは無い。 さあ、誰か俺をストーキングしてみませんか?
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思いついたら即実行だ。 俺は、ネットの掲示板に書き込んだ。 『ストーカーをして下さる女性募集!当方、17歳高校生男子です。優しく監禁して下さい。年齢は25歳ぐらいまでで。癒し系お願いします!」 よーし。あとは、レス来るのを待つだけだ。 それから俺は、日に何度も掲示板をチェックをした。 しかし、来るのはふざけた内容の物ばかりで、3日もすると流石に馬鹿馬鹿しくなってきたのだ。 だが、その翌日…
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帰宅した俺は諦め半分で掲示板を開いた。 飽きられたのか、もうほとんどレスもない。 しかし、一件、こんな書き込みがあった。 『北高の、Mくんですよね?』 ゾク、と悪寒が走る。 俺は当然、こんなところに名前など出していない。 『Mくん、わたしMくんの事はなんでも知ってるよ?出席番号わ21番。席は廊下側ニ列目前から三番目。172㎝、64kg。野球部。今日もマネージャーのHさんと話してたよね』
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同じ学校の女子…とは限らないか。掲示板にはIPアドレスは公開されていない。IDは英数字の羅列。でもこの掲示板は利用したことない。 知識のあるやつなら可能かもしれない。でもそれが可能でも、俺がマネージャーと話していた事を知る事は不可能に近い。 『いつも見てるから、いつでも監禁してあげるよ♡』そう締めくくられたコメの後に、北高のMを特定しようとするものがいくつもあった。 背中の汗が気持ち悪い。
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これは住所を特定されるという恐怖か、はたまた監禁されるという期待か。 そんな複数の感情が入り交じっていた。 確かに、俺はストーカー願望だ。だが複数名からされるのは望んではいない。 それなのにどういうことだ、ここまで俺をつけようとする人がいるではないか。 最初の不安は、なぜか自信に変わりつつあった。 翌日、早速俺はストーカーらしき行為にあった。 誰かが俺の後をつけてくるのだ、どうしてもついてくる。
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確かに望んだ。ストーカーされたいと思った。うん。思いました確かに。 でもそれは可愛い女の子に、だ。 道端に何気なく立ってる(つもりなのであろう)オヤジどもはどいつもこいつもこっちをチラチラ見てくるし、後ろをついてきてるのもどう見てもオヤジ。しかも複数。 オヤジ、オヤジ、オヤジ! これはもう違う。ストーカーじゃない。 これはホラーか?ドッキリか⁈
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「なんだよこれはぁぁぁぁ⁉︎」 つい発狂。いや、当然だ。 「「「「「「「ストーカー」」」」」」」 オヤジ達はニヤッと笑うと一斉に俺の所へダッシュしてきた。 あ、これホラーだ………。 そう自分の中で確定した時、俺はオヤジ達に何処かへ連れて行かれた。 しばらくして、ある部屋に連れて行かれた。両手両足は縛られている。 「「「「「「「監禁してアゲる」」」」」」」 死んだ方がマシだよ。
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おぞましいオヤジ共に囲まれ、俺は嫌悪と恐怖を覚え始めた。 するとオヤジの一人が後ろからキツく目隠しをしやがった。俺は身体の自由と一緒に視界迄も奪われ、暗闇の中で益々恐怖に包まれた。 やがて、自分の周りに人の気配が無くなったのに気付くと、今度は妙な心細さ迄がのし掛かって来た。 闇の中、身動き出来ない恐怖と不安。 監禁の恐ろしさを感じ始めた時、唐突に女の子の囁きが耳を擽り、そして俺の心を凍らせた。
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「M君…私の大好きなM君…やっと、二人きりになれたね…」 誰だこの声……? …ま、さ、か。 「あの掲示板の書き込み、見てくれた?そう、私はマネージャーのHよ。M君のことがずっとずっとずっとズット好きだったの」 確かにHからは被害を受けていた。 毎日毎日告白される日々。断っても終わらない。そう、あの日も。 「M君………」 あぁ、俺があんな事考えなきゃよかったんだ。 「コレデズットイッショダネ♥︎」
- 完 -