襲う相手を間違えちゃったな...

今回で初回放送から1ヶ月になる駆け出しの新番組。 私はその撮影現場にいた。 今回の内容は、5人の小学生が力を合わせていくつもの怪奇現象(という名の仕掛け)を乗り越える、というホラーバラエティなものである。 漸く舞台となる廃墟となった学校に仕掛けを施し終え、今撮影を行おうとしている。 その時、 突然照明が落ち、辺りは闇に包まれた。 [時刻 18:05]

se-shiro

13年前

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辺りは闇につつまれた……か。これが本当の怪奇現象ってやつだな。ヤラセでは再現できない充実感。たまらないね。早速撮影続行よ。そこのAD、ガキどもを連れてこい。 「何言ってるのですか!監督。こんな非常事態に。それに子役がひどく怯えて使い物になりませんよ。」 ほう。それは好都合だな。怯えているほうがリアルな物が撮れる。冷静な子役など使い物にならんよ。君ぃ。いいから連れてこい。 [時刻 18:21]

yoi523

12年前

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僕以外、皆ピーピー泣いていた。 「泣くなよ、絶対やらせだって」 一番可愛いと言われてる麗香が噛み付いて来た。 「違うよ!私分かる、この廃墟はくすんでるもん!」 くすんでる? そこにADが来て手を叩いた。 「みんな〜びっくりしたよね。大丈夫だから。さあ始めようか、行こう」 いやだと奴らは泣きながら移動した。 こんなのはハプニングというやらせ。シチョーリツが大事なんだろ? [時刻18:30]

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校舎の入り口から、中へ。 ようやく薄闇に目が慣れて来る。くすんでるところがはっきり見えるようになってきて、私は身を震わせた。 「麗香ちゃん?」 「その教室、開けちゃダメ」 春樹は、足が震えてるのにかっこつけて私を笑う。 「麗香ちゃんは怖がりだなぁ。俺は全然へーきだけどね」 ……くすんだ空気が手のひらの形をとって、春樹の首にまとわりつくのが、私だけに見えていた。 ──悲鳴。 [時刻18:43]

11年前

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ADが真っ青になって駆け込んで来た。 「何が起きた?」 「それがメンバーの一人の男の子がいなくなったんです」 「何、それは面白……いや、マズイ事になったな、急いで探せ、一応カメラは回しとけよ」 おいおいおい、面白くなってきたじゃねぇかよ。俺やっぱ監督としてもってるんじゃねぇのか?……ん、誰だ? [時刻18:45]

noname

11年前

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急に首を掴まれて、僕はどこかに引きずりこまれた。 暗い場所だ。辺りは元々暗かったけど、それ以上に真っ暗で何も見えない場所だった。 「何するんだよ」 抗議したけど、声が反響するばかりで誰も答えない。 随分と乱暴じゃないか。怪奇現象的仕掛けがあるとは言ってたけど、こんなことをされるなんて聞いてない。ジドウギャクタイだって訴えてやるぞ。 真っ暗い中、僕の目の隅を何かが過った。 [時刻18:49]

misato

11年前

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やっぱり少年はどこにもいなかった。 仕方ない、とりあえず監督に状況だけは報告しとくか。 「あれ? 監督?」 戻ると、さっきまでふんぞり返っていたあのバカ監督がいない。 かわりに椅子がぐっしょり濡れ、メガホンはその下に…。 おいおいションベンか、汚ねえなぁ。 て、そんな冗談言ってる場合じゃなくなってきたかも…。 青ざめた俺の背後で、何かが動いた。 [時刻19:07]

いのり

11年前

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青ざめた人間ほど愉快なものはない。生きていた頃は散々私をこけにしていたのに、ただ幽霊になっただけでこの始末。 子供や監督さんにはちょっとやりすぎちゃったかしら。 でも彼らが望んだことだもの。 私は振り向いたADに微笑みかけ、あの当時と変わらない小さな手でその太い首に両手をかけ、囁きかける。 「子供はさすがにかわいそうでしょ?彼はもう解放してあげたから安心して」 [時刻19:08]

イト

10年前

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[時刻23:36] 目がさめると私はいつもの校舎の中にいた。 頭が痛い.....私は側頭部をさすりながら徐々に記憶を思い出していった。 確か...あのADが思いっきり私の頭を4回続けて殴った、そのあと左手からなんか青白い光弾を打ってきやがった。 そのあとは思い出せない....。 そういえばあいつ私たちの間で噂になってる寺生まれのTとかいう奴だったわ。 その時私は思いました「寺生まれってすげぇ」

雪音さん

10年前

- 完 -