襲う相手を間違えちゃったな...
今回で初回放送から1ヶ月になる駆け出しの新番組。
私はその撮影現場にいた。
今回の内容は、5人の小学生が力を合わせていくつもの怪奇現象(という名の仕掛け)を乗り越える、というホラーバラエティなものである。
漸く舞台となる廃墟となった学校に仕掛けを施し終え、今撮影を行おうとしている。
その時、
突然照明が落ち、辺りは闇に包まれた。
[時刻 18:05]
- 1 -
辺りは闇につつまれた……か。これが本当の怪奇現象ってやつだな。ヤラセでは再現できない充実感。たまらないね。早速撮影続行よ。そこのAD、ガキどもを連れてこい。
「何言ってるのですか!監督。こんな非常事態に。それに子役がひどく怯えて使い物になりませんよ。」
ほう。それは好都合だな。怯えているほうがリアルな物が撮れる。冷静な子役など使い物にならんよ。君ぃ。いいから連れてこい。
[時刻 18:21]
- 2 -
僕以外、皆ピーピー泣いていた。
「泣くなよ、絶対やらせだって」
一番可愛いと言われてる麗香が噛み付いて来た。
「違うよ!私分かる、この廃墟はくすんでるもん!」
くすんでる?
そこにADが来て手を叩いた。
「みんな〜びっくりしたよね。大丈夫だから。さあ始めようか、行こう」
いやだと奴らは泣きながら移動した。
こんなのはハプニングというやらせ。シチョーリツが大事なんだろ?
[時刻18:30]
- 3 -
校舎の入り口から、中へ。
ようやく薄闇に目が慣れて来る。くすんでるところがはっきり見えるようになってきて、私は身を震わせた。
「麗香ちゃん?」
「その教室、開けちゃダメ」
春樹は、足が震えてるのにかっこつけて私を笑う。
「麗香ちゃんは怖がりだなぁ。俺は全然へーきだけどね」
……くすんだ空気が手のひらの形をとって、春樹の首にまとわりつくのが、私だけに見えていた。
──悲鳴。
[時刻18:43]
- 4 -
ADが真っ青になって駆け込んで来た。
「何が起きた?」
「それがメンバーの一人の男の子がいなくなったんです」
「何、それは面白……いや、マズイ事になったな、急いで探せ、一応カメラは回しとけよ」
おいおいおい、面白くなってきたじゃねぇかよ。俺やっぱ監督としてもってるんじゃねぇのか?……ん、誰だ?
[時刻18:45]
- 5 -
急に首を掴まれて、僕はどこかに引きずりこまれた。
暗い場所だ。辺りは元々暗かったけど、それ以上に真っ暗で何も見えない場所だった。
「何するんだよ」
抗議したけど、声が反響するばかりで誰も答えない。
随分と乱暴じゃないか。怪奇現象的仕掛けがあるとは言ってたけど、こんなことをされるなんて聞いてない。ジドウギャクタイだって訴えてやるぞ。
真っ暗い中、僕の目の隅を何かが過った。
[時刻18:49]
- 6 -
やっぱり少年はどこにもいなかった。
仕方ない、とりあえず監督に状況だけは報告しとくか。
「あれ? 監督?」
戻ると、さっきまでふんぞり返っていたあのバカ監督がいない。
かわりに椅子がぐっしょり濡れ、メガホンはその下に…。
おいおいションベンか、汚ねえなぁ。
て、そんな冗談言ってる場合じゃなくなってきたかも…。
青ざめた俺の背後で、何かが動いた。
[時刻19:07]
- 7 -
青ざめた人間ほど愉快なものはない。生きていた頃は散々私をこけにしていたのに、ただ幽霊になっただけでこの始末。
子供や監督さんにはちょっとやりすぎちゃったかしら。
でも彼らが望んだことだもの。
私は振り向いたADに微笑みかけ、あの当時と変わらない小さな手でその太い首に両手をかけ、囁きかける。
「子供はさすがにかわいそうでしょ?彼はもう解放してあげたから安心して」
[時刻19:08]
- 8 -
[時刻23:36]
目がさめると私はいつもの校舎の中にいた。
頭が痛い.....私は側頭部をさすりながら徐々に記憶を思い出していった。
確か...あのADが思いっきり私の頭を4回続けて殴った、そのあと左手からなんか青白い光弾を打ってきやがった。
そのあとは思い出せない....。
そういえばあいつ私たちの間で噂になってる寺生まれのTとかいう奴だったわ。
その時私は思いました「寺生まれってすげぇ」
- 完 -
作品情報
襲う相手を間違えちゃったな...
#1380
- リレー期間
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2年10ヶ月