神様システム

「今日から君たちに世界を征服してもらいます」 は?新学期早々何言っちゃってるんだ?このせんせーは。 「新学期だからって沸いちゃってるんじゃねー?」 「割りと真面目に言ってるんですけどねぇ、先生」 周りの生徒たちが茶々を入れてるにも関わらず、担任の上野先生はいつも通りのちょっと抜けた口調で続ける。 「手段は問いません。今日から一週間でどこまで出来るか。 成績はそこから出すんでがんばって下さいね 」

あいく

13年前

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上野先生は生徒想いで好かれている。生徒の中にも不良などはおらず、皆素直な子達だ。今回の世界征服の課題も、はじめはぶつくさ言っていたもののしばらくすると、世界征服の定義や具体的な方法等、それぞれ真面目に考え始めた。高校生の自由な発想は時に大人を上回る。 ある生徒が意見した。 「例えば今上野はこのクラスを征服してんだよ。こんな無理難題言われて、何だかんだ俺ら全員言う事聞いてる。征服されてる証拠だよ」

Midvalley

13年前

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「ということは」別の生徒が割り込んだ。「世界の全員が言うことを聞いてくれる状態が世界征服と言っていいかしら」 隣の生徒がそれに答える。 「そうとも限らない。例えば、現在、世界の全員と言っていいほどの人が使っているFacebook。別にみんながマーク・ザッカーバーグの言うことを聞くわけではないが、Facebookはその規模と影響力において、世界を征服しつつあると言えるだろう」

tiptap3

13年前

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その発想はなかった。僕は目から鱗が落ちた気分だった。 『じゃあ、一週間でできることって言ったって、学生の僕らじゃ限られてる。つまり…』 『世界を征服する軍備や資金じゃなくて、定義やシステム、哲学ってことか?』 隣の真面目君が僕の言いたいことを代弁してくれた。先生はその言葉を聞くと嬉しそうにウンウンと頷いた。 『じゃあ各自、具体案をまとめることを今日の宿題とします。一人でもグループでも構いません。』

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「システムか…」「ちっとも思いつかない。」「難しすぎ」そんな声があちこちから聞こえてくる中で、僕は言った。 「新しい神を造らないか」 みんなのきょとんとした顔を見ながら僕はにやにやと続けた。 「『奇跡』を一瞬で世界中に発信できる時代だ。うまくすれば一週間で世界的に信者を有する宗教をつくれるかも。どうかな?」 反対0。 ぼくらは全員ひと班で、世界制服のために「神」を造ることにした。

cheese

13年前

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必要なモノは神様。 そして、布教の方法。 具体的な神様の内容。 この三つがとても重要になる。 ことに日本は多神教で八百万の神と云う思相だ。 神様を作るのは案外簡単かもしれない。 問題は下の二つ。 布教にはやはりITを使うのが1番良いだろ。 と、ここで一度原点に還ろう。 世界制服なのだ。 神様は別に良い神様でなくても良いはずだ。 中でも都市伝説などは広めるつもりがなくても拡がっていくモノだ。

レリン

13年前

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しかし──と、僕は思いとどまった。 神を創り、信者を増やす。 それは即ち、人を騙す、と言う事にならないだろうか。 先生が僕たちに教えたい事とは、何なのだろう。 騙す事や、嘘? ──そんな訳ない。 皆が神のイメージについての話し合いに熱中しているが、僕は集中出来なかった。 僕はどうすればいいのだろう。世界征服をやめる?深く考えずに決行する? 本当に神様が居れば、この答えを教えてくれるのだろうか。

雨沢沙乃

12年前

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悩んで、悩んで、悩み抜いた。 やる気が無いと班の仲間に怒られ、それでも僕は悩み続けた。 結果。 結論が出ず僕は皆に相談した。 何だ、とっとと相談すれば良かった。 当たり前だろ、何で言わなかったんだよ。 でも、発想は正しいと思う。 うん、僕らが世界を征服するなら、概念的な物を広めるしか無い。 騙すんじゃなく、ちょっといい気分にするとか? 例えば、 「今日の双子座のラッキーカラーは白!」

ナゾグイ

12年前

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そして僕たちが立ち上げたサイトは瞬く間に全世界に広まった。今日の占い、お悩み相談室、お料理レシピ、チャリティ、リレー小説など日々コンテンツは充実し続けている。サイトの交流コーナーからボランティアなど様々な活動がはじまり、そのうねりはとどまることを知らない。 僕らはやっと上野先生の伝えたいことが分かった。 世界征服とは、世界中の人々を幸せにすることだと。

fusuke

12年前

- 完 -