吸血鬼の朝は遅い。 日の落ちた夕方になると、ゆったりと行動し始める。 彼の容姿は年齢に沿わず若い。金髪碧眼という要素もまた、彼の美しさを際立てているのだ。 森の洋館のテラスから外を見る横顔は美青年そのもの。だがその口から紡ぎ出したものは、 「…腹減った」 「雰囲気ぶち壊しです」 「はっ?」 色々台無しである。 それまで黙っていたハンは思わず突っ込んだ。 九尾のハンはエドの友達である。
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吸血鬼のエドと九尾のハンが出逢った経緯はまた別の話。ざっくりまとめると、ハンは世界中の美味を求め、遥々海を越えエドに会いに来た。いろいろあって今ではすっかり胃袋の友だ。 「幻想ムード壊すくらいならそんまま黙ってろやアホウ!」 「腹が減ったからそう言ったんだ。何が悪い」 大体お前に食の事言われる筋合いはねえ。眉間に皺を寄せる姿も様になるエド。 「どうでも良いけど、怒って素に戻るなら敬語やめろよ」
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