キッカケ

俺と幼馴染はある日、やたらゆっくりと進む流れ星を発見した。

「あんな遅いんだったら余裕で願い事3回言えるよ!大金持ちになれます様にとか!」
「でもさぁ、軽い気持ちでそう願ったら息子が死んで保険金が入って来たって話無かった?」
「うーん…じゃあ、英語のテストで百点取れます様に!」
「あ、俺も」

そう願った翌日、俺と幼馴染が乗っているバスは外国人のバスジャックに乗っ取られた。

Piano
- 1 -

「大人しくしてろよ」
外国人のバスジャックは乗っている客に銃を突きつけた。
「なぁ、これやばいんじゃね?」
「見て分からない奴いるか?」
学校に行く途中だった二人は両手を挙げて、抵抗の意思がない事を示した。
「金をよこせ」
バスジャックが運転手に銃を突きつけながら言った。
「こ、このバスは無料で運行しています。お金はありません」
二人はよしっと思った。
さぁこのまま帰れ!
「だったら…」
……?

ぷっきぃ
- 2 -

「人質でも取って、金を要求するか? How's that?」
 バスジャックがそう口にすれば、一部の乗客から小さい悲鳴が上がる。いつもはバスの中で二度寝をしているらしい同窓生も、さすがにこの状況ではそうもいかず、ただ口をはくはくと開閉していた。
「こ、困ります……お客様もいらっしゃるので、」
「黙れ。ぶち殺されてぇのか」
 ハイジャックは流暢な日本語で、バス内を圧迫した。乗客は震え、静まり返った。

ここあーの
- 3 -

どうしよう。皆、銃に怯えジャック犯の思うがままだ。このままでは短気そうな犯人が銃ぶっ放して全員御陀仏ってことになりかねない。

「説得、しなきゃ」

幼馴染が低い声で呟く。俺たちは目を合わせた。そうだ。誰かがやらなきゃ。死にたくないのなら。こんなことをやめるように、『英語』で説得せねば!

受験でもこんなに脳が早く回ったことはない。俺は英語の授業を思い出していた。えっと、外人に話しかけるときは?

Ringa
- 4 -

「え、えっと、Hey, You !」
「ん?」
俺が思いつくまま声を上げると、バスの乗員が全員一斉に俺の方を向いた。

「えっとえっと…Hello ! Nice to meet you !」
「…」
「「…」」
俺の言葉に、一瞬バスの中が静まり返った。
別の意味で。

すると、ジャック犯が呆れた顔で口を開いた。
「お前なぁ、根性だけは認めるが、バスジャック相手に『お会い出来て光栄です』はねーだろ」

hyper
- 5 -

……全くもってその通りだ。5段階評価の1が憎い。
涙を飲んで席に座った。呆れたままのジャック犯と心なしか生暖かい空気の乗客。

うう、日本人だからいいだろ!

意味もなく八つ当たりをしていると、幼馴染が小声で話しかけてきた。

「今の悪くないかもよ」
「どこがだよ」

失敗にもならねえよ、こんなの。

「でも隙ができたと思う。馬鹿な子ほど可愛いって言うし」

その馬鹿ってまさか俺?

U30
- 6 -

「悪い意味じゃないよ。ほら、優等生っぽい奴に上から目線で言われるよりはね」

分かるような分からないような。

でも、方向性は悪くないみたいだ。
挨拶が終わったら、自己紹介だっけ?念のため名前は伏せとくか。

「あ、I'm student.I'm sixteen!」

……気の利いた言葉が出ねえ!

「……見りゃ分かるよ」

ジャック犯の表情と空気が、少しだけ緩んだ気がする。
行けるか!?

haduki
- 7 -

「My English is very bad. でもユーはほら、understand Englishでしょ?」

自分が何を言ってるか、段々ドントアンダースタンド。

「I have money、じゃねーや。Myファザーとマザーがちょっとだけhave。これをあなたにgiveします!」

幼馴染の肩が、小刻みに震える。

「だからYou are my English teacher! オーケー?」

グッドバイ
- 8 -

わかってるバカだって。俺なりに何とかしようとしてるんだ。
またバカにされるだろうか?そう思ったとき、

「…I want to have a pure hurt like you…」

そう言って外国人は去っていった。
周りが唖然している中、安心の気持ちよりも先に、

「あの言葉どういう意味なんだろう…」

と思った。
それが俺の英語を勉強するきっかけになる。
テストは…想像に任せよう。

maybe
- 完 -

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