アプリは進化し続ける

Webページの時間差攻撃。 せっかちな人間程これにストレスをおぼえる。 Webが開き切る前にリンクをタップして、うっかりアプリなどの広告を開いてしまうのだ。 正しく今、タカヒロがやってしまったように。 タカヒロは新着メッセージを開こうとして、謎のアプリを開いてしまった。しかもかなり怪しげな。そして購入したおぼえも無いのに、既にアカウント登録されている。何故だ。解せぬ。 「ようこそ!」

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ようこそ。taka5515さん。 出撃準備は整いましたか? →Yes,all systems are go. No. Hold it ! なんだコレ…? 良くわかんねぇや。イエスにしちまえ。 では出撃します。そのままお待ちください。 出撃ってなんだよ。戦争かよ。 つか広告うぜぇー。 ホームボタンを押してっと。 あれ?戻らねぇ。もっかい押すか。よっと。 は?戻んねーんだけど…。

13年前

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何回押しても戻んねぇ…!! なんでだなんでだ!?!? 出撃まで10秒… な、なんだこれ 10秒ってなんだよ…!?!? 9… 8… おい、待て、待てよ 出撃ってなんだよ!? 7… 6… 5… 何が起こるんだよ!? 「ハァ……ハァ……!!!」 4… 3… 2… 1… わけわかんねぇよ!!! 0…

らんき

13年前

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タカヒロはとっさに拳を握り、身構えた。 鼓動の音が聞こえる。息をする事も忘れ、画面を見つめる。 時計の秒針の音が聞こえる。 何も起こらない。 もしかして俺、釣られた…? タカヒロは息を吐き出すと、騙された恥ずかしさをごまかすように口を開く。 「んだよ、ヘーキじゃんか」 声にした瞬間、ディスプレイに「認証完了」の四文字が表示された。 え、と思うのと同時に、空間にノイズが走った。

kemeco

13年前

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突然手にしていたスマホが変形を始め、ヘルメットになりアーマーになり次々とタカヒロの身体を包み込んでいった! タカヒロは何が自分の身に起きているのかまったく理解不能だ。 『装着完了』どこからか声がした。 すると今度は突然床が割れ、2本のレールの様な物が現れたかと思うと足の裏を固定した。 『カタパルトアップ。発進準備』 その声と共に窓が開き、カタパルトはベランダに移動し、空に向って45度程に傾いた。

真月乃

13年前

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いやいやいやいや、俺自身が飛んじゃうのかよ!!! 突っ込むべき所は確実にそこではないのに、心の中でそう叫んでいた。 実際は手に汗握るどころではない。 顔面蒼白無表情である。 アーマーの発する熱のせいか、或いは恐怖のせいか、全身をべっとりとした嫌な汗が覆っている。 目の前のモニターに映る世界は、いつも窓から見ている景色なのに。 今は、幻のように感じて。 その中に、俺は「発射」された。

minami

13年前

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五分と経っただろうか。 熱せられたアスファルトに、タカヒロは嫌という程押し付けられていた。 硬いアーマーを纏ったこの生き物が焼いても食えぬ代物だとわかったのだろうか。 ベランダから打ち出されたタカヒロの前に突如現れた巨大生物は、戯れの最後に一撃を見舞おうと、タカヒロの両足を掴んだ。 今度は死んだな。 覚悟したタカヒロの眼前のモニターには 「課金しますか?」の文字。 Yesしかなかった。

fab

13年前

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そーいやiTunesカードの残金35円だったや こうしてタカヒロは永遠の眠りにつくのであった。

きのこん

13年前

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気がつくとタカヒロは自分の部屋に戻ってきていた。傍に転がるスマホには赤い「GAME OVER」の文字。震える指でホームボタンを押すと見慣れた待ち受けが現れた。 まだ冷や汗が止まらない。リアルな臨死体験をさせられたのだ。 「課金させるためにはなんでもやるんだな。......あっ」 死んでもせっかちは治らないらしい。 タカヒロはまた何かをタップしてしまった。 【続きを執筆するには課金して下さい】

lalalacco

13年前

- 完 -