ゆけ!世界征服部!

ここは学園唯一の世界征服部だ。 部員は天才策士家の俺と、元気だけが取り柄の愛花だけだ。 「せんぱーい、愛花今日はお疲れ様なんで帰ってもいいですかぁ?」 「だめだな」 何せ我が部は非公式かつ非公開の部。先生どころか生徒すらその存在を知らぬのだ! と、つまり、部室がない。 何処かの部室があくまで何もできぬのだ。 「愛花もう帰りたいですよぉ」 「シャラップ。今日は大事な話があるのだよ」 「話ですか?」

あいく

12年前

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「思うんだけど、流石に部室が無いと世界征服するための戦略が立てれない!!」 「まあ、そうかもですね。」 「だからまずは何処かの部室を征服する!!」 そうですか頑張って下さいっというと愛花は下駄箱に向かおうとした。 「ストップ。どこへ行く。」 「え、帰るんですけど。」 当たり前のようにいう彼女に活を入れるため俺は少し大きな声で叫んだ。 「今から、部員が最も少ない部室を征服しに行くんだよ。今から!!」

T_Y

12年前

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「え〜愛花ホントにお疲れ様なんですぅ〜」 「ほら、いくぞ!」 そう言って愛花と廊下へと連れ歩く。 「でもせんば〜い、部員の少ない所なんてわかるんですかぁ〜」 「万事抜かりなし!」 多くの生徒がつかう昇降口から最も遠い部屋にたどりつく。 「ここだな」 入口まえに小さくいびつな文字で文字が書かれている。 「オカルト科学研究部ぅ〜?」 「おう」 「なんだか、科学なのか非科学なのかわからないですねぇ〜」

にらたま

12年前

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「よく聞け、作戦だ。まず奴らを油断させる為に入部希望者を装う。奴らはオカルトを科学的に操り既にゴーストやゾンビを従えているらしい。そこで、お前は手土産の実体化した幽霊になれ。では行くぞ」 「???はい~?せんぱ~い、愛花イミ不ですぅ」 とその時ガラガラと目の前の引戸が開き、真っ暗な中から後頭部?いや、前髪で顔を隠した頭が現れた。髪の簾越しから片目がギョロリ。 「ぎゃ!」俺と愛花は思わず後ずさった。

真月乃

12年前

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「…何か?」 「あ、ああ、ちょっとこの部活に興味があってな。」 「…そちらの方は?」 「あ、こいつか?こいつはな…俺の背後霊だ」 「え?」 (ほら、早く話合わせろ!) 「え?あ、背後霊でぇ〜っす♡」 (バカッ、幽霊が明るくてどうする!) (あ、今せんぱいバカって言ったぁ〜ぐすっ…) (わ、悪かったから、泣くな!) やばい、このままではバレる…。 と、その時だった。 「これは素晴らしい!」

hyper

12年前

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前髪簾は叫んだ。「入部希望1名様〜!背後霊1体様〜!」 「らっしゃっせ〜ぃ!!」 なんて威勢だ…4人しかいないのに。 気圧されつつ侵入に成功。俺は入部希望者としてオカルト歴、科学が介入すべき現象についての小論文を書かせられ、愛花は丁重にもてなされて出されたミルミルを飲んでいた。 前髪簾がぐふぐふ笑い出した。 「地縛霊が背後霊殿に擦り寄って喜んでいる!」 愛花はミルミルを吹き出し俺に縋り付いた。

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「じばくれいっ?!」 愛花は顔面蒼白で、本物の霊のように見えた。 「背後霊殿は地縛霊が苦手なのですね」 前髪簾の後ろから顔をにょきっと出すのは、さっきまで井戸の底にいたような見た目の女。にへら、とあやしい笑みを浮かべながら愛花の隣を見つめている。誰もいない。 ここは無理矢理話を合わせ、部室乗っ取りを…。 愛花の様子がおかしい。部室乗っ取りの前に愛花が何かに乗っ取られたようだ。

12年前

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「せんぱ〜い…なんか、体が…」 愛花が、青白い顔でゆっくりと俺を見た。 「お前の、背後霊じゃ無いなぁ…?」 愛花から、低く聞いたことのない声が。 どうやら地縛霊が取り付いたようだ。 だが、オカルト科学研究部のやつらはにやにやと笑いあっている。 「なんなんだよお前ら!どうにかしろよ!」 愛花の肩を揺さぶりながら、連中に叫んだが驚く言葉が帰ってきたのだ。

flower

12年前

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「君達の来訪は予期していたのさ、世界征服部」 部員4人の笑みが不気味さを増し迫る。 「な、なぜ正体を…」 「我々を何部だと?」 ぐふぐふ、と部員は手を差し出した。 「世界征服、しようじゃないの」 ──数秒後、仲間を祝福する鐘の如く、高笑いに高笑いが重なり響いたのだった。 『オカルト科学世界征服部』 俺の策は完璧だ、と堂々の部名に頷く。 さあ次なる征服へ! 「では行くぞ!」 「え〜せんぱ〜いっ」

Pachakasha

12年前

- 完 -