「俺、彼女できてもーた(笑)」 「は!?うそやろ!」 「ほんまやで(笑)C組の奈々ちゃん」 ドヤ顔をしながら前髪を 掻き上げてニカッて笑っている 俺の親友、橋本。 「うそやん、、奈々ちゃん、バイト同じやねんけど(笑)」 「まぢかよ!聞いてへんで中井!手出すなよ!」 「だれが親友の彼女に手出すかよ、、。」
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?「奈々ちゃんの彼氏は俺だ。」 突然後ろから声がした。 橋本「!?」 橋本「西村...」 教室のストーブのパチパチという音だけが静かに鳴り響く。 西村は野球部の8番ライトをやっている長身の男だ。ちなみに顔はエイに似ている。 同じく野球部の東野とは中学からのバッテリーで東西コンビと呼ばれているが、この物語には一切関係ない。 なんだかケンカになりそうなムードなので、おいとましよう。
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出て行こうとすると、北岡が立ち塞がった。 何を話しているのか聞き取りにくかったが、総合すると、どうやら3人目の彼氏登場らしかった。 北岡は金持ちであることが唯一の取り柄な、小太りの男だった。 ちなみに、同じクラスの南川は執事である親の後を継いで、北岡家のメイドになることが決定しているが、この物語には一切関係ない。 どうやら、俺も含めて修羅場を行おうとしているようだ。 これは参った。
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「だって昨日、菜々ちゃんから告ってきたんよ、だから俺の彼女や!」と橋本 「なにを言っているんだ。野球の試合が終わったあとにハート形のおにぎりを奈々ちゃんがくれたんだ。」と西村 「ワイは、こずかい50万円はたいて指輪を奈々ちゃんにプレゼントしたんだワイ」北岡は、でているお腹をポンと叩いた。するとお調子者の小杉が 「昨日カレーを食べたんだ!」とこの物語とは一切関係がないことを言っていた。
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「よし!これじゃ、埒が明かない。菜々ちゃんに直接、俺と付き合ってると宣言してもらう!着いて来い」と橋本。 「望むところだ」と西村と北岡も後を着いて行く。 「夕べの残りカレーは格別だもんな!」と一切関係ない小杉も着いて行く。 ちなみに、今日の橋本のパンツは紫のブリーフだ。西村はスポンジボブのトランクスで、北岡は錦糸の褌だ。小杉に至っては白のお子様パンツ名前付きだが、どれもこの物語には一切関係ない。
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呼び出された奈々ちゃんは「橋本くん、どうしたの?」と怪訝そうに首をかしげた。 「き、君に確認したい事が、あるんだ!」と噛みながら喋る西村。 「奈々ちゃんが好きなのは俺(ワイ)だよな!?」 一瞬の間をおき、三人の叫びが重なった。 「僕が好きなのは中辛!」と一切関係のない小杉の叫びは放っておこう。 掴み合いを始める三人。 奈々ちゃんが俺をじっと見つめていたことにまだ俺は気が付いていない。
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あわわとなっている三人を尻目に俺は足早においとまさせてもらうことにしよう… 「よ、増川。橋本らは何があったんだい?」 男勝りな女子、和田が廊下から俺に話かけてきた、ナイスタイミング‼︎ この和田は口が達者なわりに容姿端麗だ。あと橋本の元カノでもある、まぁ一切関係無い話だが。 「見ての通りだ、教室戻らないか?」 「おぅ、だな」 方向を変えた時だった。 「増川君っ!!」 ……奈々ちゃん?
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「昨日、橋本君から、伝言聞いてくれた?」 「へ?伝言?」橋本が眉を顰めた。 「昨日私、『あなたが好き…って増川君に伝えて』って、橋本君に言ったよね」 「はぁ?!」 「な、ちょっと待ちな奈々、あたしも増川のことが…」和田が畳み掛ける。 「はああぁ?!」 ちなみに俺の本名は<増川 中井>と言う。この名字みたいな名前には深ーい意味があるのだが、この物語には一切関係ない上今修羅場なので話せない。残念だ。
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「おい中井どういうことや!俺の奈々ちゃんに!」 「いつ橋本の奈々ちゃんになったんだ?」 「ワイの愛が一番深い!」 「奈々も好きだったとはな…」 「譲る気は無いからね」 「コロッケカレーは許せない…衣がぐちゃぐちゃになるからね」 互いが言いたいことを言って収集がつきそうにない。 いつの間にやらこの修羅場の部外者から中心人物へと格上げされていた俺をそっちのけで、長い長い言い合いはまだまだ続きそうだ。
- 完 -