「今日テメェらに集まってもらったのには訳がある。 ワシが大事に取っておいた秋刀魚が食われてたんだ。 んで、子分の次郎がハッキリとはわからないが、誰かが食っていたのを見たって言うんだ… オイッ!!この中でワシの秋刀魚を食ったのは誰なんだニャ!?とっとと吐くニャ!! おい、武!お前はどうなんだニャ!?」
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アニャ⁉ 不意をつかれた黒猫の、武こと武蔵は奇妙な声をあげた。 …すまんっ!ぼうっとしておった! ゴホン… 咳払いを一つ。 儂は断じてやっておらん!そんな他人の飯を盗み食いする様な卑怯な事はせん! 第一、儂のモットーは盗みをしない事にゃ! …それは野良猫にとって矛盾しているのではないか… 誰かが呟いた。 あ… 自分の矛盾点に気づいた様だ。 ……兎に角だっ!儂はやっとらん! 哲、お前どうだ⁈
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ニャ? 哲こと哲学はただ首を傾げた。 僕は食べてないと思うよ。 (おいおい、説得力のない言い方だな。武は批判した) 待ってよ。僕の意見を最後まで聞いて。もし、僕が食べていたらさ、僕なら絶対ここへ来ない。それにこの僕がルールを破るわけがない。僕なら正々堂々と確実に上へ昇りつめるよ。自信はあるし、僕のモットーは"何事も穏便に"だ、と思う。 (哲は違う。儂はその時、哲といたよ。ボスはそう言った)
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「荒くれ者のボスの言うことなど、 誰が信じるのだニャ!?」 突然、おメリさんが声を荒げた。 「…次郎と哲はボスとグルなのニャ…。 大方、武に雌猫のマリヒャンを盗られたボスの腹いせじゃろうて… マリヒャンは、この老いぼれ婆婆猫のワシにこう言ったのさ…。 "マリヒャン、どうしても秋刀魚が食べたいのにゃんっ。!" ……ってね。」
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シャアァァァッ!! それを聞いた鮭子は牙を剥いた。 何さその雌!? まさか今の話本当じゃないだろうねボス? 鮭子愛してる、もう鮭しか食いたくねえって言ったの、嘘だったなんて言わせないよ! ……隠れて秋刀魚を食おうとしたのは、まあ…いいさ。ただし!雌猫が絡むならただじゃおかないよ! え?…アタシ!? アタシが秋刀魚なんか食うわけないだろ! これが秋刀魚食った牙に見えるかい? シャアァァァッ
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おぉ、怖い怖い。 雌猫達は怖いニャーね。 話はじめたのは世渡り上手のもんぺち郎 おみやーさんたちはもっと頭を使うがいいにゃ。 匂いにゃ。秋刀魚の匂いがついたヤツが犯人にゃ! おいらにゃ?、おいらはそんな盗むことなんかしないにゃ。 魚屋の息子がいる梅ばぁにおいらの愛くるしい毛並みをひとなでさせれば、鰹だって一発にゃ!
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なら、野良犬の半兵衛に頼んでみにゃあ 高みの見物を決め込んでいたタマがふふん、と鼻を鳴らす。 彼奴ならちょいと煽てりゃすぐさま犯人を嗅ぎ分けるだろうさ。 …何?俺が怪しいって?あはは、馬鹿いいなさんな、こんな居心地の良い木を誰が秋刀魚一匹でみすみす逃すものかい。
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我輩は猫である。 さんまの件はあやまる。わしだ。 ここにししゃもがあるだろう? これで許してくれないか?
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・・・え?ししゃも? …… シシャモだとっっっ!?!? そうせき貴様! 一匹の猫に10匹以上の猫が飛びかかる。 シシャモ一匹で許してもらおうだニャンてニャンという肝っ玉! ニャニャニャ? ニャにをしておるのニャ?ニャニャメさん! あのニェ、怖いから、かくれてたの、、、 哲! 力を貸せ!とっちめてニャる! 我輩は誠心誠意謝ったぞ? うるさいニャー! 今日も空き地は平和です。
- 完 -