ノンちゃんのおもちゃ

真夜中の子供部屋。小さなベッドの中では女の子が苦しそうな息づかいをしています。 枕元にあったクマのぬいぐるみは心配になって、壁に掛かるミミズクの時計にたずねました。 「ノンちゃん、とても苦しそうだよ。大丈夫かな」 「病気になっているね。早くお母さんに知らせないといけないね」 ミミズクは答えます。これは大変。お母さんは一階で眠っているはずです。 「みんな、起きて。ノンちゃんを助けるの、手伝って!」

saøto

13年前

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クマのぬいぐるみがそう叫ぶと、人形やおもちゃたちがぞくぞくと目を覚ましました。 「ノンちゃんのためなら!」 威勢良く小猿のぬいぐるみが言いました。 「何とかしないと」 焦った様子でミニカーが言いました。 「お母さんを起こしに行くの?」 フランス人形が言いました。 ミミズクの言うとおり、ノンちゃんのお母さんに知らせるべきです。でも一階のお母さんの部屋までたどり着けるのでしょうか。

熊岡りり

13年前

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「ぼくにまかせて」 ずい、と一歩前に出たのはぜんまいじかけのペンギンでした。 「ぼくのねじを巻いてくれたら、ぼくが歩いていく」 ペンギンの足はぜんまいにつながっていて、ぴょこぴょこと歩くことができました。 「じゃあ、わたしがお母さんを起こすわ」 オルゴールのうさぎがぽろんと音を立てて言いました。 ペンギンの背中に乗り、うさぎとノンちゃんの一番大好きなクマのぬいぐるみが一緒に子供部屋を出発しました。

lalalacco

12年前

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子供部屋を出た後、三人は重大な問題に直面しました。 「階段だ!」 このまま進むとぜんまいじかけのペンギンは転げ落ちて壊れてしまうかもしれません。 「ぼくがまもってあげる!」 クマのぬいぐるみは、ペンギンを抱きかかえました。 「クマくん、危ないって!」 「そうよ、もっとちがう方法を考えましょ!」 「ぼくはふわふわだから大丈夫だよ!いくよ、えいっ!」

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クマのぬいぐるみの勇気がきっかけとなって、3匹は心を決めました。 トン。 トン。 トン。 弾むように階段を転がり落ちると、最後は廊下の壁にぶつかりました。 「やったぞ」 ぜんまいじかけのペンギンが叫びました。 「だ、大丈夫?」 オルゴールのウサギがクマに心配そうな目を向けます。 「平気だよ。それより、早く、お母さんのところへ」 ペンギンは再び、ペタペタと歩き始めたのでした。

aoto

12年前

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ようやくお母さんの寝室に辿り着きましたが、ドアは閉まっています。 ドアノブははるか頭上です。 「よし、肩車だ!」 ペンギンがうんと踏ん張ります。 その肩にクマが立ちます。 ふらつく二匹の上に、ウサギがよじ登ります。 そっと、そーっと、ドアノブに手を伸ばして。 カチャリ。 …ぐらり。 「わ!」 「きゃ!」 「ひゃあ!」 ドアが開いた瞬間、三匹はバランスを崩してひっくり返ってしまいました。

12年前

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案の定、地面にぶつかった衝撃でオルゴールのうさぎはしんとした空間を驚かしてしまいました。 ♩♫♬〜♩♬♫♫〜♩〜♬〜 「──ん...」 エーデルワイスの優しいメロディが、お母さんの耳に届きます。 違和感を感じたのか、お母さんがもぞもぞと動きます。 「......」 (こ、これで起きてくれるかな?) (起きてー! お母さんー!) (ノンちゃんのお母さんー!) さてさて、お母さんは、

12年前

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あら?なんの音かしら。 お母さんは、眠い目をこすりながら、ドアを開けました。すると、おもちゃたちがしーんと転がっていて、身動きひとつとらずじっとしていました。 ノンちゃんたら、だらしがないわね。片付けもしないで! お母さんは、おもちゃをひろい、二階の階段を、上がって行きました。そして、少し荒い息づかいのノンちゃんのそばにきて、顔をのぞきこみました。

narucol

12年前

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あら、ノンちゃん大変。 お母さんは慌てて看病しました。 次の日、お薬を飲んで元気になったノンちゃんは、お母さんに言いました。 ノンちゃんね、ゆめをみたの、おもちゃのみんながね、たすけてくれたの お母さんは昨夜のおもちゃたちを思い出して、笑顔になりました。 元気になれたのもきっと、おもちゃのみんなのおかげね。 ミミズクの時計が、 ホッホッホーウ と笑うようにおやつの3時を告げました。

Pachakasha

12年前

- 完 -