「あなたの頭の上に、クピルが乗ってるわ」 初めて訪れた場所だった。秋の季節にまるで夏のように照る太陽をぎゅっと目を細めて見ていると、肩の辺りから甲高い声が聞こえてきた。 エドはにっこりと笑顔を向け、小さなレディの前に跪いた。 「はは、やぁこんにちはお嬢さん。失礼だけど、俺はここに来るのは初めてなんだ。ピッケルだかピッコロだか知らないが、頭の上に乗るような知り合い、俺にはいないよ」
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「でもクピルは乗ってるわ」 レディはにっこり笑顔を返す。 エドは自分の頭に手を当ててみるが、特に何かが乗っかってるような感じはない。むちゃくちゃに掻き混ぜる内に、自慢のヘアスタイルは酷いことになった。 「クピルったら、上手いことあなたから逃げ回ってるわ」 レディは可笑しそうに小さな手を口元に寄せる。馬鹿にされてるみたいでエドは少し不機嫌になる。 「君は想像力が逞しいね。俺の知り合いに似てる」
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「知り合い?恋人かしら」 くすりと笑ってから、小さなレディは何度か頷く。 「そうね、確かに想像力は大切よ。クピルを捕まえるには。一度頭に乗ったら中々離れないから」 そう言われ続けると、段々と心配になって来るのが人間というものだ。 「鏡とか、持ってないかい?」 「言うと思った」 差し出された花の形の手鏡を見る。そこにはやはりエドの顔しか映っていない。 「クピルが素直に映るわけないでしょ」
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