主演女優はだれ

待ちに待った夏休みが 始まりました。 友達を捨てて一人を好む 寂しい女子高生の私は、 バイト三昧。 朝早起きして愛犬とラジオ体操。 バイトは夕方からだから それまでひまなのでゲ○で ホラー映画を借りまくる。 私はホラーがだいすき。 ゲ○で借りれるDVDも尽きた頃 私は暇で死にそうだった。 そんなときこの先 あんなことが起こるとは思わなかった。

安田

13年前

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いつものように見飽きたDVDを見ていると、突然場面が変わった。 どこかの森か林だった。小さな声で 「○○(私の名前)…。待ってる…」 という声が聞こえた。 「え!?」 慌ててDVDを巻き戻す。 あんな場面あったっけ!? だけど、その場面は消えてしまっていた。 何度見てももうその場面は見られなかった。 「気のせいかな…? 気持ち悪いな」 DVDの続きを見る気にはなれなくて私はぶつぶつつぶやいた。

cloche

13年前

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「でも、よくよく考えたらこんなことってありえないじゃん…怖いよ」 時は彼女を待たなかった。 停止していたはずのDVDが再生し始める。 場面はとある階段。 女子高生のスカートの中を盗撮しているかのようなカメラワーク。 もうこの時点で、私は確信する。 このスカートは私の学校。そして、この階段は私のマンション。 つまり、この映像は私を撮っていると。 「きゃぁああああああああああ」

戸塚 雫

13年前

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だけど、彼女が階段を上がっていた時周りに人はいなかった。 だからこそ彼女は恐ろしくなった。 (何・・・これ・・・) 彼女はこの出来事をただのイタズラだと思うことにした。 だが、イタズラだとは思えない恐ろしい出来事が始まろうとしていた。

evirunn

12年前

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そんな気持ち悪い出来事があっても、バイトの時間はやってくる。 いつも通りにメイクして、ミニスカートでガールズバーに出勤だ。 「おっつかれさーん。今日も綺麗だね!」 私の目線に暑い胸板と柑橘類のいい匂いの店長が飛び込んで来た。 「お疲れ様です。店長毎日褒め方同じですよ~」 「っえ、素直な今の俺の気持ちなんだけど。いつも同じでごめんね!」 つまらないやりとりなのに、体温が急上昇するのがわかる。

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「実はちょっと気持ち悪い出来事があって。」 家でのあの出来事を店長に話すと、 「マジで?ヤバイじゃんか、 あぶないから、帰りとか1人じゃ歩かない方がいいよ、」 珍しく、ちゃんと話を聞いてくれて、 なかなかいいとこあるんだ… 仕事が終り、帰ろうとするとさすがに またあの事を思い出し、怖くなる。 とぼとぼ歩き始めると後ろから、 「お疲れさん、送ってやるよ」 と店長がやってきた、 マジ優しい…!

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店長は私の歩幅に合わせてくれるようにゆっくり歩いている。優しい人なんだ、と安心感でいっぱいになった。 やがて私の家の前にーー。 私は振り返り、店長にお礼を言おうとした。 「ありが……、て、あれ? 店長いないし……」 帰ったのかな、と首をかしげながら玄関のドアを開けた。 そこには、私が過去に○オでレンタルしたDVD、それもホラー映画のみきっちり並べられていた。 「おかあさん?いない?」

12年前

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店長は不思議なとこがある人だし、例えば超スピードで帰って行ったと言われても、納得してしまいそうだけど。 でも、お母さんは違う。いつも私がバイトから帰ってくるまで待っていてくれる。どこに行ってしまったんだろう…。 然し、私を更に戦慄させたのは、レンタルしたホラー映画が視聴した順番に並んでいることだった。 当然、バイトに行く前に見たあのDVDが一番端にある。 よく見てみると、タイトルが消えていた…。

12年前

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「タイトルは消したよ。完結させるにはまだ早いと思って」 部屋の暗がりから声が聞こえる。 「いつでも君を見てたよ。DVDまで作ったんだ。でもね、まだ足りないシーンだらけだ」 興奮したようにうわずった声。ふと柑橘類と血の香りがし、私は気付いた。 「続きを撮ろう。これからずっと二人一緒だ」 店長が、赤黒く汚れた手を私に差し出す。 ああ、あれはお母さんの。 逃げなきゃ、逃げなきゃ、にげな…ーー

- 完 -