あごのにきびがいたいのです。
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トンネルを抜けるまで 決して掻いてはいけないよ。
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よかった。 痒いのではなく、痛いのであって、そこは守れそうです。 思われニキビなんて言うけれど、こんな大きなニキビがあっては千年の恋も醒めると言うもの。痕が残らないようにしたいのです。
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月が姿を現してまた山の向こうへ消えるまで 決して手で触れてはいけないよ。
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はなのにきびもいたいのです。
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川を渡ってせせらぎの音が背中に遠くなり、あたりに完全な静寂が満ちるまで 決して見られてはいけないよ。
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やはり決して人の目に触れてはいけないのですね。貴方に相談して本当に良かった。 それでも、また。 どうしてもにきびが疼いた時、まだ日が高いのにどうしようもなく気になってきたら。 一体どうすれば良いというのでしょう。
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私は、慌ててニキビの練り薬を塗った。
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「なあ。お前それ、にきびじゃなくておできじゃん」 にきびの薬のチューブが落ちた。
- 完 -