私はあなたを傷つけたい
私は、いつか殺人鬼になるのではないかと、時々怖くなる。
私は、人が痛がる姿を見るのが大好きだ。堪らなく、興奮する。
それに、生理前になると、ちょっとしたことで他人に苛立ち、その人を傷めつける妄想を繰り広げる。
なに、笑ってんのよ。
うるさい、うるさい、うるさい。
こいつの、舌を切ってやろうか。
ほら、今日も始まった。
他人に芽生える、殺意と、興奮。
- 1 -
いっそのこと殺人鬼にでもなってしまえば、すぐに楽になれるんだろう。
だけど、そんなことは駄目に決まっている。
私には大切な人がいるから。
最初は苛立ちを感じた他人を傷付けるけど、いつかはその大切な人も傷付けてしまうんじゃないか。
想像するだけでもゾッとする。
だけど…
それも、いいかもしれない……
- 2 -
だめ。だめよ
傷つけたらあの人は私から離れて行ってしまうかもしれない
あれ、でも離れていったら大切な人じゃなくなるのかしら?
大切じゃない人は他人?
そしたら簡単に傷つけることができる?
大切じゃないなら傷つけても私は罪悪感を感じない?
あぁ、興奮してきた
どうしようもなくあの人を傷つけたい
でも、直ぐに傷つけるのはダメ
ちゃんと順序を踏まなきゃ
そうね、先ず手始めに…
- 3 -
足つぼを押してやってみた。
「指の付け根は肩こりに利くんだって。あ、ここは肝臓。お客さんストレスたまってんじゃないですか♡」
彼はのけぞって痛がった。
ジュルリ。
次はドライアイの彼のために目薬をさしてやる。
「ゴメン、いっぱい落としちゃった♡」
彼はのけぞって痛がった。
ジュルリ。
耳掻き、ジュルリ。爪切り、ジュルリ。
♡ ♡♡♡♡ ♡♡ ♡♡
なんて献身的な私!
さぁ、次は♡
- 4 -
さてさて。
今彼は熟睡中である。私の膝の上で、まるで甘える子供みたいに抱き付いて。
幸せそうな彼の寝顔とは裏腹に、私の頭の中は、痛がり悶え苦しむ彼の顔でいっぱいなのだ♡
彼の鼻、そして口。
私は彼のそれを静かに塞ぐ。
「……んぐっ」
ほら、苦しいでしょ…
「……んぐっ、んぐっ!!!!」
私は手を離した。
彼はまた静かに寝息をたてはじめた。
- 5 -
やだ♡
起きないなんて!
鼻と口を塞がれれば大抵の人は目を覚ます。
すぐに気づかれたらつまらないもの。
彼はまだまだ夢の中を気持ちよく漂っているようで、「泳げるって…」とか言いつつ、未だに無防備な寝顔を晒している。
予想以上に好感触だわ。
やっぱり彼は最高♡
「………ぐ、っ」
もう一度。彼の顔まで手を伸ばす。
「…………もっと…」
- 6 -
・・・そう、もっと。
傷めつけたい。
「…おはよ…」
「あら、おはよぅ。よく眠れた?」
「それが、なんか何度も同じシーンの夢見ちゃって…何度も溺れる夢」
「疲れてるのよ。今、朝ご飯の仕度するね」
つまらなくなった。
眠っている“この人”の反応は無防備過ぎて。前戯では快感なのに挿入された途端に冷めてしまう下手なSEXみたいだった。
やるなら…やっぱり
ナマで痛がる姿が見たい。
- 7 -
紡ぐ想いは歪んだ愛を創った。
新しく買い替えた携帯に送信ボタンを押した。見てくれてるかなぁ♡ @pm5:27:01
「誰から…?」
ふと台所にいるはずの彼女からメールがきた。 @pm5:27:43
「洒落たやつだな、おーい何てかい…」
ふとメール内容を見てみたが、あるのは一文下のサインばかり。 @pm5:28:10
はぁ、もっと…もっと、怖がって…@pm5:27:58
そして…
「##…
- 8 -
あなたを…刺したい」
「えっ⁇一体何を言って…」
私は包丁を持って彼の前に現れた。
「ちょ、じょ、冗談だろ⁉」
そして、私は躊躇う事なく刃先を前に向け、彼の腹を刺した。
「ぐあーーーーーっ‼‼」
「おい、どうした?」
「あ、ううん、何でもない。夕飯できたよ」
私は、暫く妄想にふけっていたようだ。
でも…私は…彼を…
「ん?この魚、骨多いな〜。いてっ!喉に刺さった!」
♡
- 完 -
作品情報
私はあなたを傷つけたい
#496
- リレー期間
-
8ヶ月