novelnove

姉弟仲は良き日の為に

車に乗り、ドライブに行く。
久しぶりの休暇でワクワクしながら、ドライブに行く。
普段は行けない様な所にでも行こうかな?
ドライブインに寄って食事しようかな?
途中、ガソリンも入れなくちゃ。
あと、飲み物も必要だし、一息つくのに、プチ菓子も必要だ。

あれこれ考えるのも楽しい。
まだ、初心者マークの付いた車が愛らしい。

免許取り立てで、ドライブが楽しい。
車に乗り、自分で運転するのが楽しい。

anpontan
- 1 -

「こら、初心者が飲物片手に運転する気か?」
着替える俺の背後に声。振り返ると歯磨きしながら姉が立っていた。
「誰とだ?」
「ひ、ひとりだよ」
本当かと言うから本当だから本当だと答えた。
「なら付き合ってやる」
いや結構だと慌てて手を振り首を振るが聞いてない。
「初心者一人は危険だし、たまには姉弟で」
話しの途中で駆け出した。口ん中が泡でいっぱいになったんだろう。

かくして姉とドライブと相成った。

榛野テル
- 2 -

車に乗り込むまでにかなりの時間がかかってしまったのは、姉の準備に手間取ったからで。
「女は準備がかかるものだ。男ならそれくらい受け止められる広い心を持て」
だなんて言う。
「恋人同士じゃあるまいし」
呟くと、何故かチョップされた。

「んで、どこに行くつもりなんだ」
適当に車を走らせる僕に姉が聞く。
「んー、普段行けないような所、とか?」
「それならここがいい」
と、目の前にスマホを出してきた。

成瀬ルナ
- 3 -

「ここ、行くの?」
スマホには二つ県を越えた先にあるド田舎の地図が表示されている。
「漫然と車を走らせるよりも目的があった方がいいだろ」
「遠くないかな…」
「不満か? この罰当たりが。ああご先祖様、不肖の弟を呪わないでください …ナムナム」
「…でも、何で急に?」
「気になってたんだよ。ここ数年行ってないだろ」
「うん、そうだね」

信号を曲がって高速の入口に向かう。目指す先は、爺ちゃんの墓。

hayasuite
- 4 -

「…何で、急に?」
無事に高速に乗り、暫くして俺はもう一度訊いた。助手席の姉は俺と同じ進行方向を見つめたままだった。
「運転に集中しろ。思ったより速度出てるぞ」
「……理由が気になって集中できない」
道は空いている。ガソリンは3分の2残っていて、速度は100キロを前後する程度。11時少し前の空は快晴だった。
姉が一瞬だけこちらを見た。

「結婚するつもりなんだ」
──アクセルってどっちだったっけ?

ちょもらんま
- 5 -

「こらこら何、とろくさくなってる。波に乗んなさい。制限速度は100だよ。だいたいあんたは…」

何だよ結婚って、何で今このタイミングで言い出すんだ?爺ちゃんの墓って、結婚の報告?俺は姉の顔を見た。

「おい、よそ見しないで前向く」

トンネルのオレンジ色の明かりが姉の顔を通り過ぎて行く。結婚か、ビックリだよ。今までそんな素振りなかったからな。でも一応聞いてみる。

「その結婚相手って、どんな奴?」

blue
- 6 -

「元ヤンキーのトラック野郎」
「ぶッ⁉︎」
危うく急ブレーキするところだった。

「嘘。普通にサラリーマンの同級生」
「運転中に脅かすなよ…」
「ごめんごめん。そいつ、てきとーな私とは正反対の真面目なやつでさー。近々あんたにも会わせるから、驚くなよ?」

「もう父さんと母さんには紹介したの?」
「前の連休に会わせた。結婚するって言った瞬間の父さん、面白かったよー。ホントに固まってたもん」

ぱっちん
- 7 -

「父親ってああなるんだな。面白かったよ。いや見物、見物。」父さんが気の毒だ。そして旦那になるヤツはもっと気の毒だろう。何しろ、この姉なのだ。もうメチャクチャなのだ。よくこんなのと結婚するなと心底同情する。まあ引き取り手が見つかって良かったのは良かった。行き遅れて家に居られても困る。まだ俺は実家に世話になるし、姉がいなくなればより快適だ。「幸せになれよな」「言われなくても」心にもない事も言える。

Face リナタ
- 8 -

高速を降りて一般道に入ってから「母さんは?」と訊いてみた。
「喜んでたよ」
「そっか。よかったね」
「うん」
「で、女同士の特別なやりとりとかあったの?」
「ないよ。ただ、お爺ちゃんのお墓にも報告してねってさ」
「そう言う事か〜」
「そう言う事よ〜」
「あっ! お婆ちゃんには?」
「もちろん、帰りに寄るよ〜」
「やっぱりか〜」
ふたりで笑い「ボチボチ、墓地に着くよ」との俺の駄洒落に再度笑い合った。

ぷにぷにヒロ坊
- 完 -