俺はとにかく強かった。そりゃあもうめちゃくちゃなレベルで。 格闘漫画の主人公なんて目じゃねぇって思えるよ、今ではさ。 やろうと思えば世界も終わらせれると思う。 うん、これマジで。 だってさ、信じられるか知らないけどどんな攻撃も効かないしどんな敵でも一瞬で倒せるんだぜ? 前なんか核当てられたけど生きてたし。 周りの民家は全滅だったけどさ。 と、そんな力を手に入れたのは一ヶ月前のアレが原因だと思う。
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トマトだね、確実にトマトが原因だわ。うん、これマジで。 知らない人の家の畑になってたトマトがものっすごい美味しそうに熟れてたからさ、ついつい盗み食いしちゃったわけ。そしたら、ほうれん草を食べたポパイみたくぐんぐんパワーが漲って来たんだよ。 で、俺はそのトマトを調べたんだ。絶対、そのトマトを栽培してた家の人が妖しいんだけどさ、あいにくこの間当てられた核のせいでその家もまるごと焼けちゃったからね……
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まぁとにかく俺は今現在、人類最強ってわけだ。人類どころか宇宙最強かもな。 今現在、俺宇宙に居るわけだし。 だって核で地球ほぼ住めねぇんだもん。火の七日間もいいとこだわ。火と水と雷の七日間ってなんだあれ。無理ゲーだろ。 暫くここに浮かんでいるが、お腹も空かなければ便意も催さない。 俺、今人間なのか? …まぁ、息苦しくも無いし、地球が再編成するのを見守ってみますか。
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その後、地球は地殻変動と嵐を繰り返し、面白いくらいにその姿を変えていった。 見守り続けて、もう60億年くらいはたったのかな? 最近の地球は大分様子も落ち着いたようだし、そろそろ地上に降りてみるか。 60億年もたつと、変わるもんだな。 つーか、俺、完全にアウェーじゃねえか? なんか知らない知的生命体もいるし。 ……この地球でやっていけっかな。 なんか、転校生の気持ちがよくわかるわ。
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俺は、ソロソロと地上に接近して行った。大気圏に突入する時に、なぜか咳が出た。宇宙人類最強なのに、何で咳が出るかな? -- ま、いっか。その時点では深刻だとは思わなかった。 かなり接近してみると、バイオハザードマークがやたらと目に付く。放射線マークと少し違った奴ね(苦笑) よぉーく観察してみると、太古にファーストフードと呼ばれていた物らしく、バイオジュースにバイオサンド。 核物質は食料だった!
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いやいやいや。そんなもん食べるやつらと、おれ、うまくやってけっかな。 地面に降り立つ。 「こ、こんにちは…」 「#/&@&!,¿☆%$>+〆○¥/…!」 だめか。やはり言葉が通じない。 外国に行くって、こんな感じ? いや、でもテキストとかないからなあ。 まったくわかんないし。 そんなことを思っていると、レーザーを当てられた。 「おっと」 さっとかわすと、今度は大砲のようなものを持ってこられた。
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その知的生命体は、その巨大な大砲から赤い弾丸を撃ち出してきた。 やばい、流石に宇宙人類最強を自負してる俺でも真っ赤に加熱されたでっかい弾丸食らったらかなり痛いかもしれねーなぁ……。 ん、赤? どこかで見覚えがあるカラーな気がするぞ、と思っていると、その弾丸は俺に当たって……。 「ぐしゃっ…!」 弾け飛んだ。 こ、これは……!
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トマトじゃないか!! もしかして、俺が食べたヤツを復元して……? 「%#|\{^'$€€!」 べしゃ、ぐしゃ……! ちょっとトマト投げるの止めて欲しい。地味に痛い。 それに、なんだかすごく久しぶりにお腹が空いてきた。 投げられたトマトをうまくキャッチして、かぶりつく。 ……こ、これは……!
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普通にトマトだ。いや大ぶりなだけ味が薄い。昔食べたトマトの方が遥かに美味い。 「腹が減ってりゃ美味い!」 俺はトマト弾を貪る。途中で奴らが海水をぶっかけたりしたので、塩味がいい感じに効き食が進む。わーわー騒いでるが耳に入ってこない。 「ばかやろっ!われわれの攻撃をくーなー!」 ん?振り返ると奴らが大きくなっていた。いや俺が縮んでるのか。 「ごめん」 超パワーを失った代わりに同類になれたみたいだ。
- 完 -