夢を見た。 通学路である川原で白いワンピースの女の子に会った。 彼女は僕に向かって、こう言った。 「タスケテ」 彼女は誰だ?何故僕に助けを求めてる? 考えてるところで、 目が醒めた。
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目が覚めて、ふと天井に目が行った。 するとそこには、血まみれの女が天井に張り付いており、僕と目が合うとこう呟いた。 「ネェ。アナタ。アノコノコト、ミェテタノネ。タスケテヨォ。ゴボゴボッ。」 女は喋ると同時に血を吐いた。僕の顔に血がかかる。 「う。うわぁぁぁぁぁぉぁぁぁ!!」 僕は豪快にベットから落ちた。情けなくなるほど腰を抜かしてしま…………あれ?
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なぜか、僕は空に浮かんでいた。 そして、空から白いワンピースの女の子を見ていた。 川原で、石を積んでいる…ん…川の流れが早くなってきたぞ。 あの子大丈夫かなぁ。 水が川から漏れ出し、その子を足を覆っていく。 ヤバイ助けなきゃ! 「○○!」自分ではなんと言ったか分からないが、その子の名前を呼んだのだろう。 すると少女はこちらを向いた。 「マタ、アッタネェ…コンドハタスケテクレルノネ、ヒキョウモノ」
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と同時に腕を掴まれた、とても子供とは思えない力だ、びくともしない やばい、どんどんひきづられていく 「や、やめろ・・・!俺が何したっていうんだ!」 「ダッテコノマエミステタジャナイ、ソレイガイニリユウガイル?」 「待てよ!アレは夢だと思ってたんだ!しかも途中で途切れたし・・・しょうがないじゃないか!」 「フウンアナタモイイワケバッカヤッパリミンナオナジナノネ、サヨナラ」 引きづりこまれた
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濁流に飲み込まれる。あの子の思惑に飲み込まれる。助からないのか、ここで終わりなのか。 いや、終わりたくない。 僕はあの子の手を掴み、必死で岸に向かう。 なんとか助かった……。 と思ったら助けたはずのあの子はすでに骨になっていた。 あれは夢じゃなくて遠い昔の記憶。俺が助けなかったからこの子は死んだ。 「もう、誰かをひきずりこむなよ」 そう遺体に話しかけると遺体の手が僕の足を掴んだ。 「オワラセナイ」
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うわあああああああああっ! うわっうわっ!うわーーー! 「ど⁉どうしたんです⁉お客さん!」 ハァッハァッハァッハァッ… 「だ、大丈夫ですか?お客さん。深呼吸して」 自分がどこにいるのか分からなかった。車?…タクシー。 「もう直ぐ試験会場に到着するけど、具合が悪かったら受付で言った方がいいよ」 「は、はい。大丈夫です…ちょっと怖いゆ…め」両足首の間に血走り見開いた目玉が二つ「ヒキョウモノ」
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目を疑いもう一度確認すると もう彼女はいなかった 14年前、確かに僕は幼馴染の彼女を助けることができなかった 川原で溺れている彼女を見つけ、大人を呼んで引き上げたが、数分後に死んだ 岸に引き上げてから死ぬまでの間、僕は何も出来なかった それがショックで医者を目指した 勉強に忙しく、肝心な想いをすっかり忘れていたらしい 皮肉なもんだ 嫌な夢から大切なことを思い出すなんて
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俺は問題用紙を捲った。そこにも血走った目玉が二つ...俺は気を失った。 ピピピ... 「ハッ、夢か...」あの学生が運ばれて来てから妙だ。 ピピピ... 「はい」 「先生、今連絡がありまして患者が運ばれて来ます」 「わかった」 僕は白衣をはおり部屋を出た。救急隊がストレッチャーを運んで来る。救命士が上に乗り心肺蘇生をしている。 溺水か...さっきの夢... あの学生と何か関係が...
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「お願いします!」 「…‼」 運ばれて来た患者を見て、僕は凍りついた。 14年前のあの子にそっくりだったのだ。だが、身体は治療もままならない状態だった。 僕はできる限りの処置をした。だが… (この子はもう…) 心の何処かでそう思い始めていた。 ピッ…ピッ…ピーー… 心電図は止まり、辺りは沈黙で包まれた。 僕は…また… と、突然、冷たい手が僕の腕を掴んだ。 「…マタ、ミステタワネ」
- 完 -