君へ
万物へ
ぼくは
君が思うようなやつじゃない
そんなやつじゃない
朝起きて
花に水をやって
夜寝るとき
おやすみを言う
或いは
それ以下の人間だ
うまくやろうとして
雨に打たれることもある
光もあるが
極楽は多くない
嘘と真は
いつも喧嘩ばかりだ
人生は
悲しいもので
お湯をいれてあげたり
蓋をしたり
時間が過ぎるのを待つ
カップ麺
幾星霜
涙は風にさらわれる
ぼくは
そんなやつだ
- 1 -
真愛ナル者へ
手放せないのに
時々忘れてしまう。
そんなヤツだね、君は。
唇に触れて
僕を駆け巡ったら
あっという間に
吐息に消えていく。
チョット切ナイカ...
富める時も貧しき時も
病める時も健やかなる時も
いつ何時も君を探している。
近頃、なにもかも、
窮屈になってきたけど
いつか分かつその日まで
...だね。
と、考えていたら
平和のハトは最後の一本。
喫煙室にて
- 2 -
七日目の蝉へ
きみの生はすぐに忘れられる。
きもちわるいだのうるさいだの
身勝手なニンゲンに文句を言われ、
こどもには虫捕り網で捕まえられ
さんざんな七日間だったろう。
わたしの生もいつか終わる。
自身の身勝手な振る舞いで
周りを傷つけてきた。
わたしの生はきみのように
力のある限りやれることをしてきたか、
悔やむことは多々あれど、
きみのようにさいごまでなき続けられないようだ。
裏庭にて。
- 3 -
なないろへ
パレットの上には、たくさんの色
混ざり混ざって、ななついろ
真っ黒になった赤色に、黄色くなった朱を混ぜた。
テエブルの上には、ひどく遠い世界が見える
わたしの目には映らない、名前も知らぬ空の上
真っ赤になった青色に、茶色くなった黄を混ぜた。
くろあかきいろ、あおあかちゃいろ。
わたしの目には映らない。
花瓶に添えた花びらが、テエブルの色を塗り替えた。
ヴェランダにて
- 4 -
自分へ
君は、普通です
特別なものなど何もない
誰かが君と話したとして
多分、明日の午後には忘れてしまう
ハコの中身はは空っぽだった
其れを悟られてはいけない
そのために君はコトバを使う
愛想笑いで逃げる
綺麗な星空の下、君は思う
特別なヒトになりたい
誰かの為だけに生きたい
只、其れだけなのに
難しいね
夜の散歩道にて
- 5 -
麗しい夜へ
単刀直入に言うと君を愛してる。しかし夜ってのは無粋を好まない。だから言葉を尽くして君を口説くのさ。
遠くの音が聴こえる。天高い風の渡る声も降って、月明かりは僕の顔半分を明かす。そして密やかに夜は息衝いて。
僕はよく泣くだろう。君はそれさえ抱いて夢に誘う。バンシーのように僕の涙が宝石なら、スターサファイアなら君に全部捧げよう。
嗚呼 世界を去ることのない夜よ。
窓際にて
- 6 -
少年へ
めいいっぱい走り回りなさい
怪我をすることもあるけれど、
思いっきり楽しんで、疲れ果てなさい
滑り台を滑りなさい
砂場でアートを作りなさい
ジャングルジムを登りなさい
ブランコをこぎなさい
友達とおしゃべりしなさい
譲り合いなさい
助け合いなさい
一緒に楽しみなさい
公園にて
- 7 -
近づいてくる死へ
僕は怖い
隠さず言おう
死ぬのが怖い
つまり、君が
僕は子供の頃癖があった
ベッドで死のことを考える
人は何故死ぬのか
死んだらどうなるのか
”永眠”
その言葉が本当なら
寝たら僕は死を体感できるのか
なんてことを毎日考えていた
その癖は今も変わらない
そう考えると僕と君とは幼馴染的な存在だ
僕は君を受け入れなきゃいけない
だから、僕に生を教えてくれた君に感謝する
寝室にて
- 8 -
君へ
これを開いたということは、目覚められたのですね。まずは、おめでとう。君は自分のおかれている状況に混乱を覚えるかもしれません。それもそのはずです。
大人だったはずの体が少年の体に代わっているのですから。
君は訪れる死や、自分の拙さに悩んでいました。そこで、君は人生をやり直すことに決めました。僕は前世の君のことを伝えるため、この9つの手紙を用意した、というわけなのです。
脳移植実験室より
- 完 -
作品情報
君へ
#4934
- リレー期間
-
5ヶ月