本物のコーヒー

いつも私は学校の近くのコンビニにお昼を買いに行く。 オニギリが良いかな〜。それともたまにはお弁当?散々迷ったあげく、結局いつも安い菓子パンを二つ買って学校に行く。飲み物はいつも持参している水筒だ。 たまにコーヒーを入れていく。 こう見えて私は甘党なので砂糖が入ったコーヒーしか飲めない。 お昼の時間。 友達と机をくっつけランチタイム。 甘い菓子パンを食べた後、コーヒーを飲んで後悔。 苦い。

レリン

12年前

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しかもドロドロとしている。さしずめ砂糖と間違えて片栗粉でも入れてしまったのだろう。 すぐに友人たちが私の異変に気付く。 「どしたの?具合でも悪い?」 私は「何でもない、ちょっとお手洗い」と友人たちに言い置いて、その場を後にした。 こんなもの飲んでられるか。 早くまともな珈琲を。 今なら某大型スーパーブランドの安物珈琲でもいける! そんなことを思いながら歩いていると、自販機の前まで来ていた。

BanJack

12年前

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急いで財布から小銭を出し、ミルク増量中と書いてあるロング缶コーヒーのボタンを押した。 ゴロゴロ あまり温かくないが、仕方ない。 教室のランチの輪に戻り、緩めの缶を軽く振り、所望の甘いコーヒーを口にした。 「えっ⁈ 何これ?」思わず声がでた。 「どうしたの?」友人たちがすかさず聞いてきた。 「ドロドロしてる…」訝っている私に友人が言った。 「コーヒーなんだから当たり前じゃん」

ヤサカ

12年前

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「はあ?超意味わかんないんだけど」 しかもこのコーヒー、鬼の様に苦い。 成分表示をよく見ると、「ミルク0.2%、砂糖0.1%」と書いてある。 「しかも、何でミルクが0.2%しかないのよ!全然増量していないじゃない!」 すると、周囲は驚きの表情に変わった。 「…あんた、マジで何も知らないの?」 「何が?」 「今、これまでのコーヒーが飲めなくなってる事…」 え…え〜〜⁉ 「何で⁉何でよ⁉」

hyper

12年前

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「政府が珈琲原産国とのフェアトレードを断ったの。だから珈琲豆が輸入されない今、人工の化学珈琲原液が開発されたのよ」 「…?へ、へや~とれ~ど?」 「それくらいググれ!」 難しい事は置いといて、兎に角もうコーヒーは頭の良い人が開発した人工的なのしか飲めないらしい。 それにしてもだよ…この味は無しだろ⁈ もう一度、成分表示に目をやると… 原材料:化学物質ドロヌメッチョ2G1 …う…なに?これ?

真月乃

12年前

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「許せない!こんなのコーヒーじゃない!」 バンッと机を叩いた。 「私が作る方がまだマシ!」 友人たちの首がそろってかしげる。 「だから、ほら、あれ!納豆に生クリームかけるとピーナツバター味になるでしょ!」 ああ、と友人が続ける。 「梅干にカルピスかけるとチーズケーキ味になるらしいね」 「そう!」 「麦茶に牛乳と砂糖入れるとコーヒー牛乳になるよね…」 そう呟いた友人に抱きつこうとしたら、拒否られた。

Pachakasha

12年前

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ということで、麦茶に砂糖と牛乳を入れてくるくるとかき混ぜた。まさしく色はコーヒー牛乳!一口飲むと友人たちは私の顔を覗き込み言葉を待った。 「コーヒー牛乳と言われたらそうなんだけど…」 欲しかったのはこれじゃない、と首を横に降った。 ひとまずランチを終えたが釈然としない気持ちで授業を受けていた。こつんと何かがぶつかった。紙屑だ。 「コーヒーなら闇市場にある」 書かれていた中身に驚いた。闇市場?

NaNasi

12年前

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振り向くとその紙屑を投げてきたのは、いつもはおとなしくてあまり目立たない一人の男子生徒だった。 見ず知らずの男がいきなり紙屑投げてくるなんてあり得なくない⁈と思いつつも その闇市って何処でやってるの? と紙に書き、男子生徒(名前は確か加茂優也だった)の方に投げる。 そこからは返事がなく、結局は授業が終わるまで待つ形になった。 授業が終わり、休み時間になった途端加茂の席へ向かう。 「何処にあるの?」

FuFu

12年前

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「それは…」 加茂はそう言うと鞄の中を探って、何かを取り出した。 「これ」 加茂が机に置いたのは、一本の缶コーヒー。 「飲んでみなよ」 そう促されて、私はその缶コーヒーを飲んだ。 「…うまい」 ここでBGM 『本物のブラックコーヒー!ブラックマーケット!』 「…ってCMを考えたんですけど、課長」 「ボツ」 「…ダメですか」 またやり直しかと思うと、僕は不意にコーヒーが飲みたくなった。

minami

12年前

- 完 -