"鼻が赤い" 僕と彼らの違いは、 ただそれだけだった。
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他の奴らと違う部分が何かあれば、異質なものと見做される。足も四本、角も二本立派なものが生えている。トナカイとしての仕事はきちんとこなしている。 けれども俺には表立ってではないものの、陰口や嫌がらせの的になっている。 サンタのおじさんが優しく声をかけてくれているのが悔しいのかもしれないが、俺の鼻は皆と違って灯りにもなっている。 皆とは、違う。
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僕は自分の鼻を擦りながら泣いていた。 こんな鼻さえ無ければ! こんな鼻さえ無ければ! みんなと、もっと遊べるのに… くしゃくしゃな泣き顔を見られるのが嫌で、森の奥まで。 どうして僕はみんなと違うの? なんでみんなそっぽを向くの? ねぇ、誰か教えてよ。 教えてよ! 強く…強くなりたいよ…
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その日から、僕の戦いは始まった。 明け暮れぬ修業の日々、あまりの過酷さに目の前の現実から逃げようとも考えた。 だか、僕は決して逃げなかった。 全ては自分を軽蔑した者達への復讐のため…
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どの位経ったのだろうか 何日?何ヶ月?何年? 時間が麻痺したように修行に明け暮れた そのかいがあったのか、僕の姿は
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なんと光り輝く純白へと変わってしまったのだ! 真っ白な体、キラキラ光る角、そして少しだけ色のくすんだ赤い鼻。 以前とは全く違う姿…。 過酷な修行は体毛の色まで変えてしまったのだった。 仲間たちは、今の僕を見たら何と言うだろう?サンタさんは何と声をかけるだろう? 「復讐」という名の下に修行をし、昔の姿より更に変わってしまった僕。 僕のしている事は本当に正しいのだろうか?
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サンタは難しそうな顔をした。 「どうなさいましたか?」 「その光は私がプレゼントを配るときに役立つ。煙突の足場を踏み違えることもないだろうし、道も間違わないだろう」 しかし、とサンタは首を傾げる。 「おまえは光りすぎている。闇夜に現れる私は匿名性のある存在であり続けたいのだが、それだといかんせん目立ちすぎるわぁ・・・」 僕は落胆した。
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僕はお日様に相談した。 お日様さえも目をしぱたかせていた。 お日様は、「君、日本、とゆう国を、知っているかい?噂によるとあの国は光が足りないらしいんだ・・・。」 僕はサンタさんにその事を伝え、仲間にサヨナラを告げ、日本へと向かった。 日本についたら早速
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空を照らしてやろうと駆けた。 しかし話と違う。すっかり日が暮れたというのにギラギラと町は明るいではないか。 自身から発せられる純白の淡い光など瞬く間に掻き消されてしまう。 悩んでいると真っ黒な仔猫が隣にやってきた。 「いいなあ、白い体。真っ黒だからお家の人に追い出されてしまったんだ」 それを聞いてとある使命感が宿った。 修行はきっとこの子と出会う為にしていたのだ。 僕はこの子の母親になる!
- 完 -