「先輩、すきですっ!」 目の前で私に告白しているのは、紛れもない女の子の後輩。 そして私も女の子。 ここは夕日の光が差し込む誰もいない教室。 なにがどうなっているの?
- 1 -
とりあえず口をぽかんと開けてみた。 赤くなっているのが可愛い。 た、たぶん真面目な子なんだろうなぁ。。 と考える。 小さく震えているその子の肩に手を置いて、 私は言った。
- 2 -
「可愛いね♡そういうの嫌いじゃないよ」と言うとますます顔が赤くなる後輩の茜。 あまりにも恥ずかしくなってしまったのか茜は顔を真っ赤にして俯き加減のまま黙ってしまった。 沈黙に耐えかねた私は茜にこう質問してみた 「よくある質問でゴメンね。どうして女の子である私を好きになったの?」 質問をされた茜は意を決し、赤い顔をさらに真っ赤にさせてこうつぶやいた
- 3 -
「先輩は、わたしの理想にそっくりなんです…。蓮川先輩に…」 女子校だから、そういった話は周りから聞こえてはきていたけど、よりによって自分、しかも二次元と一緒にされたとは…っ! 去年の文化祭の舞台で、男役をやったことがきっかけなのかなぁ
- 4 -
「…うーん」 さてどうしたものか、と頭を掻く。 するとこちらの感情を鋭く察したのか、茜は涙目になって手を振った。 「い、いいんです!叶わないって分かってて告白したんですから…自己満足のために」 それでも真剣さは痛いほどに伝わってきて、私はどうしても…断りきれなかった。 「じ、じゃあ…お友達から、なら。」 「本当ですか!?」 パッと表情を明るくする茜。 「じゃあ!な…名前で呼んでもいいですか!?」
- 5 -
な、名前かぁ… ま、それくらいならいっか。 「いーよ?」 そういった途端、茜はキラキラと目を輝かせていく。 う。なんだろう、この敗北感。 純粋なものを目にするとこう…自分が可哀想に見えてくる感じ。 「り、莉子先輩…?」 必殺おめめうるうるで上目遣い…! なんじゃこの子ー! 女同士なのに、この萌えってなにー!!
- 6 -
その日から、遊園地、カフェ、映画館などなど、もう行ったことがない所がなくなるくらい一緒に遊んだ。 この居心地のいい関係がずっと続けばいいのに… そんな事を思っていた矢先、一通のメールが! 「先輩に改めて伝えたい事があります。 今から家行きます。待っててください。」 胸が高鳴った。 気づけば私も茜の事が好きになっていたのかもしれない… その数時間後だった。 茜の死を知らせる電話が鳴った…
- 7 -
交通事故 茜の両親が話してくれた。 その他にも話したと思うが、私の耳には届いてこなかった。 公園のベンチに座っていた。いつから座っていたのか私にもわからない。ただ、頬に泣いた跡がなくなっていた。 家に帰ってもそこには茜はいない。しかし、彼女との思いでだけがあった。 彼女はデートの度に思い出や記念と言ってはお揃いでキーホルダーや縫いぐるみをお揃いで買った。 それらが綺麗に陳列していた。
- 8 -
これは...あの時の、そして、これは...告白されてから初めて遊びに... あっ、あのメールが来た日って、茜が私に告白してきた日だ。 あれからもう、1年か... 『改めて』って、告白記念日とかってか、茜らしいや... その時、一瞬だが私の顔を風が撫でた、 『先輩、すきですっ!』 今度はあの時とは違って堂々と、私の目を見て言われた様に聞こえた。 今は、ちゃんと答えられる。 「私もよっ!」
- 完 -