顔に関する衝撃の高校入学式

高校の入学式。とんでもないものを見てしまった。 俺と同じ顔の生徒がいる。 壇上で新入生代表で何か喋ってたが、中身は全然頭に入ってこない。 喋る内容よりそいつの顔が気になってしかたない。 「ねえ、あの人あなたの兄弟? 超似てるじゃん」 隣の名前も知らない女の子ですら気づいたらしく、俺にしきりに話しかけて来る。 「俺に兄弟がいるとか聞いたことねーぞ」 「そうなの?じゃ、他人のそら似?」 「さあ?」

あいく

13年前

- 1 -

俺は軽く受け流すように返事をしたが、正直かなり動揺していた。名前は全然違うが、声や髪型なんかが見事に一致しており、鏡から抜け出た自分を見ているような気分だった。はっきりいって、気持ち悪かった。 暫くしてそいつが喋り終わった。それでも俺は拍手もせずに、そいつを見ていた。 退場際にそいつと、一瞬だが目があったような気がした。 そしてそれは、どうやら気のせいでもなかったらしい。 「ねえ、君」

harapeko64

13年前

- 2 -

向き合うと気味が悪い程に似てやがる。何だかパクられてる様でイラつく。 「龍門寺 拓也君だよね?」 なぜ俺の名を。 「僕は鬼頭 純。よろしく」 パクリ野郎は馴れ馴れしく右手を差し出した。俺はその手は見て見ぬ振りで唐突に切り出した 「お前…何モン?」 パクリ野郎はフフッと小馬鹿にした薄ら笑いをすると、今度は何気に勝ち誇った様な視線で言った 「放課後、生徒会室に来てくれるかな?歓迎するよ…龍門寺拓也」

真月乃

13年前

- 3 -

初日だから、大したことはしない。あとは教科書を買った人から解散、との指令が出ると、皆は一様に教室内へ目を走らせた。 春だから。出会いの季節だから。 恐る恐ると始まる辺りの会話に耳を傾けながらも、俺は目を伏せた。 今日の俺には他に大事なことがある。申し訳ないが、明日からよろしく。 心の中で宣言して、俺は面映い空気の教室を出た。 胸が痛い。なんといっても出会いの季節だから。

sir-spring

13年前

- 4 -

「で、来たけど。」 俺は約束の場所にいた。ここは215教室。職員室の右隣の階段を上ると奥にある。新入生の俺は意識して配置を頭に叩き込む。 窓の外からは満開の桜が見渡せる。格好のロケーションだ。ムカつく面のこいつさえいなけりゃ。 「龍門寺クン来てくれたんだねっ♡そこ腰掛けて♡」 え?なんだ今の? 俺と瓜二つかつ俺の門出の元凶が、先程とはうってかわった親しみを込めた猫なで声でそう言ったのだ。

todoelmund

13年前

- 5 -

「は?お前どうしたんだ?さっきとなんかおかしいぞ!」 と言った後、違和感を覚えた。 こいつの制服、名札が二年のじゃないか。 あいつはたしか新入生代表だから、俺と同学年のはず… 考えているとドアの開く音がした。 「やぁ、龍門寺拓也君」 こいつは…どういう事だ…俺と同じ顔が3人目…だと? 外では風が急に吹き荒れ、桜が少しずつ散っていった。 「まずは説明してもらおうか?鬼頭…純!」

12年前

- 6 -

颯然とした雰囲気がただよう室内に、三人の俺がいた… 正確には1人の自分にパクリ2人がいると言ったほうがいいだろう。 ふらつく思考回路を堅くして、恐る恐る口にした。 「あんたら、誰?」 口に粘土でも詰まったような感覚だった う、ぅ…… 立ち尽くす俺に二年のパクリ野郎が、先程から一切変わらない笑顔で応える。 「難しぃなぁ、どーやって説明すればいいのかなぁ♡?」

Air

12年前

- 7 -

「簡単にいうと、君は僕で、鬼頭くんも僕ってこと♡」 「わかんねーよ‼」 「他人の空似じゃないってことだ。理解したか?」 「全然わかんねー‼」 絶叫する俺を、鬼頭は飄々と、2年の名札の奴はニコニコと見ている。 「お前らと俺、親戚なのかよ?」 「違うよん♡」 「頭悪いんだな龍門寺君は」 パクリたちの言動にブチ切れそうになったところで、鬼頭が一歩前に出た。 「教えてあげよう。僕たちは実は──」

12年前

- 8 -

「ドッペルゲンガーだ」 鬼頭は自慢気に言い切った。 俺は思いっ切りぶん殴ってやろうかと思った。 「ドッペルゲンガーって何だそれ。真面目に答える気あんのかよ!」 ドッペルゲンガー。 世界には三人同じ顔がいるという、都市伝説みたいなものだ。 「流石鬼頭君♡説明上手い上手い♡」 2年の奴も信じてんのかよ。 「もういい、疲れた。帰る。」 「また明日な」 「龍門寺君またね♡」 明日から登校拒否したい。

12年前

- 完 -