ぼくは、きんぎょです。 ぼくは、まあるいきんぎょばちのなかにいます。 まいにち、きんぎょばちのみずのなかでゆらゆらおよいでいます。 みずくさも、ゆらゆらゆれています。 ぼくには、ゆめがあります。 それは、きんぎょばちのそとにでることです。 でも、そとはみずがありません。 でも、ぼくはいつかそとにでたいです。
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ぼくのきんぎょばちは、まどのちかくにありました。ぼくはそとをながめては、とおくへいくゆめをみていました。 そんなあるひ、あいていたまどから、のらねこがぼくをねらってはいってきたのです。 ぼくはひっしに、ねこのつめからにげました。 そのうちに、きんぎょばちをとびだしてしまったのです。 ぼくのからだはまどをこえ、はるかしたをながれるかわにおちたのでした。 ぼくのながいたびが、はじまりました。
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そとにでるゆめはかなったけど、そとでなにがしたいかはかんがえていませんでした。 かわのながれにみをまかせながらやりたいことをかんがえているとおなかがすいてきました。 いままではごしゅじんさまがごはんをくれたけどここじゃそうはいきません。でもなにがたべられるのか、ぼくにはわからなかったのです。 こんなにもそとはたいへんなのか。ぼくはとほうにくれていました。
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すると、サケさんというおなかをおおきくしたおさかなにであいました。ひとつじゃなくて、たくさんです。 サケさんたちはうみというみずがいっぱいあるところにいっていて、すごくものしりです。 たまごをうみにいくのにぼくもついていきました。いろんなことをおしえてもらい、ぼくはますますそとのせかいにいきたいとおもいました。 餌の食べ方を知り、僕はサケさんたちとお別れして、ふたたび川を進んで行きました。
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ぼくはサケさんにならったようにいしの隙間のこけをかじってみた がりっとおとざしてくちじゅうがあおくさいあじがした。おもったよりもまずい。いままでたべていたごはんはもっとおいしかったのに。 でもぼくはとてもおなかがすいていたからこけをむしゃむしゃとたべた。 おなかがいっぱいになった。いつものようにすこしおひるねをしよう。そうおもったとき むこうからなにかおおきなものがやってきました。
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それはさかなとはちがういきものでした。ごしゅじんさまのようなにんげんでもありません。 けむくじゃらであらあらしくて、てあたりしだいにさかなをたべてしまうようなやつでした。 かわうそだ、かわうそがきた! そばにいためだかが、ひめいをあげてにげていきます。けれど、かれはすぐにつかまってしまいました。 ぼくは、はじめて「てき」にであったのです。それは、きんぎょばちのなかにはいないそんざいでした。
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かわうそはさかなよりもはやくおよぎ、つぎつぎとさかなをつかまえてはそのするどいきばでかみくだいてしまいます。 ぼくもひっしでにげましたが、ついにつかまってしまいました。 けれど、かわうそはぼくをみていいました。 なんだおまえ、まっかっかでへんなやつ。 かわうそはぼくをなげすてていきました。 ぼくは、きがつきました。まわりにまっかっかなさかなはいっぴきもいません。 ぼくは、ひとりぼっちでした。
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ぼくはきゅうにさびしくなりました。 きんぎょばちのそとにでて、サケさんからいろんなことをおそわったけれど、ぼくのともだちはどこにもいないからです。 きんぎょばちのなかには、おなじまっかっかなともだちがいました。 ぼくはともだちのことをかんがえます。 ねこがきたときはじぶんのことだけでせいいっぱいだったけど、みんなはどうしたんだろうか? けがとかしてないかな? みんなにあいたくなりました。
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そのとき、ききおぼえのあるこえがきこえました。ぼくはびっくりして、うえをみあげました。 ちいさなてが、ぼくをゆびさしました。おおきなてが、ぼくをすくいあげました。 「こんにちは、おさかなさん」 ごしゅじんさまのこえでした。 ぼくはすいとうのなかでたぷたぷゆられました。 しばらくするとふたがあいて、すいとうがかたむきました。 ぴちゃんとおとをたててとびだしたのは、あの、きんぎょばちでした。
- 完 -