『月乃ちゃんへ (ちゃん付け構わないよね?) 私は貴女の大ファンです。作品は全て読みました。そしてありがとう!私への秘密のメッセージ、読取ました。TwitやFBookでも探したよ。京都の看護士さんなんだね。私は妻子より貴女を選びますよ。今、新幹線です。間もなくそちらに到着です。今夜から、二人の新しい愛の物語を綴ろうね』 このパラグラフを見つけて数時間後の今… 玄関のチャイムが…鳴り続けている…
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どーすればいいんだろう…キモチワルイし恐い。秘密のメッセージとか愛の物語とか一体何⁈キチガイだ… どうしよう、警察に連絡?これってストーカーって言うよね? その前に誰かに相談?いやすぐにでも警察に…そんな事で呼ぶなって怒られるかな…。 一人であたふたと色々考えてみるが、膝が震えてドアに近づくことさえできない。 そうだ、取り敢えず彼氏に連絡しよう! 震える手で履歴から間宮拓人の名前を押した。
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「もしもし!?拓人!?」 「ん?お、もしもし。どした?」 「家に来て!」 「どーしたよ急に。恋しくて会いたくなったとか?ww」 「冗談言ってる場合じゃないの!今すぐ家に来て!いいから早く!お願い!死んじゃうかも!」 「え?何?死ぬって?よくわかんねぇんだけど…」 「お願い!来て!」 上ずる声で必死に彼に助けを求めた。 まだ玄関のチャイムは止まない。 「おーい。開けてくれよーう。」
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あ~もう、まだ来ないのかなぁ… 早くしてよぉ…怖いよぉ… しばらくすると、チャイムが止み、今度は激しい口論が聞こえてきた。 恐る恐るドアに近づくと、拓人の声が。 良かった…お願いだから、早く追っ払って! 『貴方は何なんですか!?何の用ですか!?』 『あァ!?その言葉、そっくりそのまま返してやる!テメェはアイツの何なんだよ!?』 『私は月乃ちゃんのファンです!貴方こそ何なんですか?』
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『俺は月乃の彼氏だよ!!』 『彼氏ィ?何を言ってるんですか、月乃ちゃんに彼氏なんて居ませんよ。月乃ちゃんはねぇ、私に会いに来てと秘密のメッセージをくれたんですよ?』 『わけわかんねぇこと言ってんじゃねーよ!!テメェいい加減にしねぇと警察呼ぶぞ!?』 『良いですよ、呼べばいいじゃないですか。捕まるのは貴方ですから!』 あー、ヤバイヤバイ。何か変なことになってきた。どうやって説明すれば……。
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「と、取り敢えず説明を考えよう。このままここにいてもしょうがないし。…なんて言って説明しよう…」 「近所迷惑よ!…なんか違う…。彼は本当に私の彼氏なの!お願いだから諦めて帰って…納得してくれるかなぁ…。私のために争わないでっ!…ない。」 そんな風に頭を抱えている間にも、激化していくドアの外の口論。 「…頭を抱えていてもなんにもならない。ええい!当たって砕けろ!」 私は、ドアの外に飛び出した!
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バン! 「止めて…‼」 私のために2人の男が戦ってるなんて! ちょっと嬉しいような気もした矢先 みるとそこにはブスとイケメンがいた。 ブス…とはもちろん勘違い野郎…!のことではなくて、私の彼氏間宮拓人のことだった。嗚呼哀しいかな、ここにきて彼の不格好さをまざまざと見せつけられるとは。大事なのは容姿じゃないと言い聞かせてこのかた彼との愛情あふれる生活に甘んじてきたが、まばゆいイケメンに跡形もなく
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心を砕かれていた。 おそらく、あの凛と通った鼻にやられたのだろう。 怜悧な形かつ、愛情あふれる二重にやられたのだろう。 甘い唇にやられたのだろう。 風に靡く髪にやられたのだろう。 爽やかなファッションセンスにやられたのだろう。 細く見えて、意外に引き締まった肉体にやられたのだろう。 ストーカーの手によって、間宮拓人は膝を突かされていた。 ああぁ、私は拓人を抱擁した。 拓人は静かに立ち上がる。
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「俺…負けたよ…」 そんな一言を残して、拓人は帰ってしまった。私は追いかけるが、その背はすぐに見えなくなる。でもそれも当然かも、私本気で追いかけてなかったから。そりゃぁあんなイケメンがいたら…ねぇ? 「あの…!」 思い切って振り返る。が、そこに先程の人影はなかった。…どういうこと? ********……… 人影は言った。 「ああ、もしもし?こちら破局屋です。ご依頼の件、無事完了致しましたので…」
- 完 -