オレンジ

忘れ物をした。教室に戻ろうか悩んだ。忘れ物は筆箱。忘れても問題はないはずのもの。
それでもなぜか足はゆっくりと教室に向かっていた。廊下は夕日でオレンジ色に染まる。グラウンドや校舎のあちこちから、さまざまな部活の音が構内に響いている。廊下は、私の足音が。
誰もいないと思っていた教室には、滅多に学校に来ない男子が窓際の机に座り外を眺めていた。彼は問題児だ。私は筆箱を諦め教室に入るのをやめた。
その時、

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「なんだよ。お前もか」

掠れているけど、深みのある低い音でそう聞こえた。教室のドアに背を向けながら、どうでもいい筆箱を取りに来たこと

hrk

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そんなことも忘れて聞き耳を立ててしまった。一瞬、私に言われたと思った言葉はそうではないと気がついた。「 だって!」と反論する女の子の声が聞こえたから。

「学校にも来てくれないし、会いに行っても追い返されるし」

ドアを挟んですぐそばからその女の子の声がした。

───この声は・・・

「だから別れるって?そんなもんか、お前も」

「 私の気持ちばっかり計らないでよ! 」

しゅ、修羅場だな・・・

ハルノテル

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?心がざわつく。

「うるせぇな、デカイ声出すなよ。女だろ」

「っ最低!なんでよ、なんでそんなこと言うの?」

壁一枚を隔てて耳に入る会話。
そして気づいた。そうだこの声、

私から彼氏を取った女の子の。

私の思考がぐるぐると渦を巻いた。
その間にも話は進む。

「こんな思いするんだったら好きになんかならなきゃよかった!!」

「結構なことだな。どこまで自分が大事なんだ?」

「っ」

柊@睡眠不足

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息を詰まらせる女の子の様子が、手に取るように分かる。

会話が筒抜けというだけで、こうも同じ臨場感を味わうものなのか。
ヒリヒリと伝わる空気に鼓動が昂ぶり、彼の言葉に期待が募る。

──言って!
その子に、言ってやって‼︎

「お前、自分のためにオトコ選んでんだろ?彼氏ってのは見栄を張るためのお飾りじゃねーからな」

「ヒドい!そんな言い方って無い!!」

「酷いのはお前だろ?」

おやぶん

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そんなに自分が大事なら、と彼。
「俺と付き合おうだなんて考えた事を後悔するべきだな」
「……っ!」
姿は見えないが、唇を噛んで彼を憎々しげに睨むあの子が目に浮かぶようだ。
「もういい!」
苛立ちと涙の混じった叫び声が聞こえ、あの子が違う方のドアから出て行った。

走り去るその背中を、私はとても冷めた目で見ていたと思う。

Rion

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直後、私の目の前のドアが開いた。冷たい視線に射すくめられて、逃げるタイミングを失う。
「立ち聞きかよ」
弁解の余地もない私は開き直るしかなかった。
「面白かったから、つい」
チッと舌打ちして行こうとする彼に無意識に声を掛ける。
「学校、来なよ」
「余計なお世話だよ」
「来てよ」
「なんでだよ」
背を向けたまま答える彼を、何故か追い掛ける私。教室に置いてある筆箱のことなどもう、とっくに忘れている。

hayaswitch

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「というか、なんで来ないの?」
「それ、お前に言う必要ある?」
「彼女いたのになんでかな〜」

彼が立ち止まり睨む。不思議だ。さっきと違って全然怖くない。私の中にはふつふつと好奇心が湧き上がってきた。私は彼の隣に並ぶ。

「学校、楽しいよ。私もいるし」
「は?なんでお前がいたら楽しいんだよ」
「私が楽しいから?」
「意味わかんねぇ。つかお前も結局自分のことばっかりかよ。だから女ってのはヤなんだよ」

ハイリ

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「そうだよ、ワガママなんだよ女なんて。自分勝手で感情的で、好きとか嫌いとかそんな話ばっかしてる」
でも、と私は彼の目を真っ直ぐに見た。あの子にも、誰にも、それはこれまでしたことのないことだった。
「私は後悔しないよ。君に今日、声をかけたことも。これから君との間に起こる、どんなことも」
ほんの一瞬、彼の表情が変わった気がした。
「言ったな」
オレンジの世界に低い声が跳ねる。
「やってみろよ、クソ女」

まーの

- 完 -

作品情報

オレンジ

#4086

リレー期間

2年11ヶ月