闇の中の少女が最後に見たものは

この世界には少女が一人。 その子は誰にも会ったことがない。人という生き物を知らない。自分が何者なのかもわからない。 この世界には大きな、何者も寄せ付けない大きなお城がある。少女はお城が気になって仕方がなかった。そして、少女は恐る恐る足を一歩踏み入れた。

tyama

13年前

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少女は建物の扉を開けた。建物の中は薄暗く光となるものはなかった。少女は何もしらない。だからこそ、恐れを知らない。少女は薄暗い中を、中へ中へと進んでいく。 5歩くらい歩いたところで、少女の足にコツンと何かがあたった。しかし少女は足を前へと出した。ぐっと踏み出すと、ぐにゃり、と何かを踏みつけた感触がした。少女はとっさに眉にシワをよせ、もう片方の足も前に出した。やはり、ぐにゃりと何かを踏みつけた。

kaoriii##

13年前

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しかし、少女がそれがなにかを確認することはなかった。数歩進むと変な感触もなくなった。代わりにぐにゃりとしたものは足の裏にこびりついた。しかし少女は気にしなかった。 歩き続ける少女。すると目の前に樽が転がっていた。 少女よりもふた回り程大きな樽が数個、それもかなり無造作に。 少女は樽に近づいて行く。不意に樽に亀裂が入った。 しかし少女の歩みは止まらず、樽の目の前に 到達した。 樽は、破裂した。

noname

13年前

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大きな音ではなかったが少女は驚いてお尻をついた。 そのまま破裂した樽を凝視して土煙や埃が落ち着くのを待った。 辺りに静寂が戻ってくると少女は立ち上がり、近づいた。そこには恐怖やさみしさや不安な感情はない、少女を突き動かしてるのは好奇心だけだった。 目を凝らすとそこには少女がいた。膝を抱え眠っているのか死んでいるのか解らない。人形かもれない。 それは自分と同じ服をきて同じ髪型。自分に良く似ている。

yemaya

13年前

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少女は自分によく似た「何か」に数歩近づき、手を伸ばした。 触れれば少女の髪と同じようにサラサラ流れるであろうその髪。触れれば少女の頬と同じようにたおやかな弾力で返ってくるであろうその頬。 しかし少女はあと少しのところで手を止めた。同じならば触れる必要もない。 少女の好奇心は少女によく似た「何か」ではなく、暗く永遠に続くかと思われるお城の奥に向けられた。 そして少女は踵を返すと更に奥へと進んだ。

きるこ

13年前

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少女は木靴の音色を奏でながら、石の床を歩んでゆく。 永遠に続くかと思われた長い廊下にも終わりがあることがわかった。そこでは大人の男三人分もあろう、大きな両開きの扉が少女を見下ろしていた。 真っ赤に塗られたそれには、真鍮のノブが埋まっていたが、とても高い位置にあった。少女はつま先を立てて指を伸ばすが、空を掻くばかり。 途方に暮れて視線をそらすと、隅の暗がりに樽が積まれていることに気がついた。

saøto

13年前

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少女はドアノブに手をかけるために 樽を使おうと考えた。 いくつもある樽に近づいて行くと、 また樽に亀裂が入った。 さっきのことを思い出して、思わず後ずさりしたが遅かった。 樽は、いくつも、一斉に破裂した。 ものすごい音と爆風に、 少女は倒れ、気をうしなった。

いつき

13年前

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目が覚めと、隣にはまた少女がいた。 今度は触れてみようと決心して そっと手を差し伸べる。 ところが 触るそばからその少女はパラパラとくずへてゆくではないてすか、音も立てづ、まるで砂の人形の様に形がなくなるまで朽ちてゆく 少女は怖くなった これはいったいなに? わたしも同じなの? 徐々に好奇心が恐怖心で塗り替えられてゆく自分に気がつき始めている。 ドアのノブ 崩れた少女 わたしはだれ?

バーバラ

13年前

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ほんとにかわいい女の子ですね。 明るい光が周りを包む。どこかで聞いた声の女の人が優しく自分を見下ろしている。 「そうよ。あなたは何億ものライバル達と競争しながら、長い道をひとりがんばって私達のところにきた天使なの。」 最後に感じた不安を一掃してくれる暖かい言葉。 柔らかい腕に抱かれながら、新鮮な空気を吸って、私は大きな声で泣いて応えた。 ありがとう。これからよろしくね、ママ!

emma

13年前

- 完 -