「ねえねえ、鬼ヶ島まで来てあれなんだが御三方に相談が…」 「ウッキーどうしたんですか桃太郎さん」 「ケンケン相談すかー」 「なんだい桃太郎ワン」 「いやーどう考えてのこのメンツじゃ鬼に勝てなくないか」 3匹とも頷く。 「だって道中たまたま居た動物集めて作った即席メンバーだよ。しかも武装が刀だけって無理があるよ」 3匹とも納得している。 「いやさ流石に空気読んで行くて言ったけどこれじゃあ厳しいよ」
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「もう一度、作戦を…」 「キキ。桃太郎さん。今頃、怖気づいたのかキー。情けない小僧ねウキ。」 猿吉が主人になめた口を吐いた。 3匹の仲間で一番戦闘力があるのは猿吉である。その猿吉を雇うのに貴重な吉備団子が3個も必要だった。しかも満足していないらしく、虎視眈々と吉備団子を狙っている。その割には雀の涙ほどの活躍しかしていない。おそらく鬼退治なんてどうでもいいのだろう。 私は猿吉に言った。
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「帰れ、猿吉。」 「ウキ?どうしたの桃太郎さん。戦闘能力ゼロになりたいウキか?まったく、馬鹿ウキね。」 本性を表したな猿。これではこの先も私のいう事など聞くはずがない。 だが、本当に戦闘能力ゼロになると言っても過言ではなかろう。 犬は歯がボロボロ、キジは目が悪い、という事実を道中で知った。 打ち明けられた時には少々緊張と重い空気が漂ったが、 "あ、じゃやっぱいいです" とは言えなかった。
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だが、猿吉がチームの輪を乱していることは明白だ。今のところ一番の戦力ではあるが、主人である私に対してもこの態度。恐らくこのまま鬼に挑んでも指示を無視し、仲間を危険に晒すだろう。 「猿吉、マジでお前クビ」 「ハァ!?馬鹿か!?俺が居なきゃ勝てねーだろ!?」 もはや語尾も忘れた猿吉に散々暴言を吐かれたが、これで枠に空きが出た。 一旦島に戻り、新たな仲間を加えて体勢を立て直そう。さて誰かいるかな…
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「それで、ボクの所に来たアカか」 困った顔をしているのは、泣いた赤鬼だ。 「そうなんです!優しさの鬼!鬼退治の鬼!裏切り者の名を受けて、正義の為に戦う鬼!どうか、私に力を貸して下さい!」 「ボクは……。ボクは、そんな立派な鬼じゃないアカ」 溜息を吐き、泣いた赤鬼は真実を私に明かした。 「解ったアカ?ボクはただの卑怯鬼アカ。本当に優しいのは、青鬼くんアカ……」
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仕方が無い。それなら青鬼を誘ってみるとしよう。 泣いた赤鬼は青鬼の居場所を知らなかったが、地道な聞き込みの結果なんとか青鬼に出会うことに成功。 「人を苦しめている鬼たちが居るんだ。赤鬼の為に自らを犠牲にした心優しい青鬼よ!どうかその力を貸していただけないだろうか?」 「俺はもう大勢の人間の前に姿を現すつもりは無いアオ。そうだ、隣町の彼なんかどうアオか?名前は、たしか………」
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「貴方が浦島太郎さんですね?」 隣町の民家。縁側に座って物思いに耽っていた老人に声を掛ける。 「そうじゃが……君は?」 彼は一見すると普通の人間だが、青鬼の言葉によると様々な拳法や暗殺術などを会得しており、鬼をも凌駕する力の持ち主らしい。 とある者どもに仇を返すために修行をしていたら、戦闘能力が一夜で城一つを滅ぼせる程になったそうだ。 仲間になってもらえれば、鬼退治は達成するに違いない。
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「お願いします浦島さん。」 「お主に問いたい。何故鬼を退治する?」 「え、、それは、、それは、悪だからです」 「ほう。ならここの村人が何をしてきたかは分かるのかね?」 「それはどういう、、」 壮絶だった。この村の人たちは鬼を食用として扱っていたそうだ。 「それでも鬼は悪だと。そう言うかね?」 「は、初めて知りました、、、。」 「まぁ嘘なんだけどね」 「嘘かい!」 村は平和でした。
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一方その頃、鬼ヶ島では…… 「本当に申し訳ございませんでした!悪い事はもういたしません!」 「ほんまやな!嘘やったら承知せんどこのボケカスども!!」 「はいぃ!猿吉さまぁぁ!」 何故か関西弁を駆使する猿吉。 この猿、たった一匹で鬼たちを制圧したのであった。 「何が桃太郎じゃ!何が鬼じゃ!どいつもこいつも口ばっかりやな!」 岸壁に仁王立ちし、猿吉はタバコを燻らす。 後の清原和博である。
- 完 -