私はイソディ・ジョーンズ。 冒険家だ。 私は今、最奥に黄金像が隠されていると言われナントケ洞窟に来ている。 洞窟をしばらく進むと、道が二手に分かれていた。 さて、どちらに進むか…む? よく見れば道に看板が立てかけてあるではないか。 左手の看板には 『この先、大雨の道』 右手の看板には 『この先、灼熱の道』 どちらの道も苦戦を強いられるだろう。 さあ、どうする? 私は迷いつつも道を選択した。
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大雨の道を私は選ぶ。 "灼熱"の語感が与える恐怖の度合いは、"大雨"の比ではない。 大雨の道を進むと、ぬかるんだ泥道が続いていた。 「なるほど、大雨によってできた道、というわけだな」 つま先を出すと、体が沈んでいくのが分かる。危険だ。 私は七つの秘密道具「双眼鏡」を使い、道の奥を見通した。 『閃光の道』と『床屋見の道』に分かれている。 よし! 引き返そう。私は選択肢両方を味わいたいタイプなのだ。
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だが、私は『床屋見の道』が気になって仕方なかった。冒険続きで、髪も髭も伸び放題なのは無関係ではなかろう。 『大雨の道』を抜け『床屋見の道』へ進む。 天井から滴る水滴。いや違う、なんだこの液体は! 液体により毛髪が溶けていく。これは床屋などという生易しいものではない。液体を分析して脱毛エステを開けば、門前市をなすのは間違いない。 さっぱりした私を待っていたのは『苦行の門』と『享楽の門』だった。
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私は、しばらく考えた。 誰もが迷わす選ぶのは、『享楽の門』であるのは間違いないだろう。 だからこそ、怪しいのだ。なぜか今までとは違う不気味さを感じる。 私は、迷ったあげく『享楽の門』に進んでみる事にした。中は、真っ暗だ。だいぶ歩き始めてきたとき、笑い声が奥の方から聞こえてくる。私は、その時初めてこの選択を後悔した。明かりで見えたのは、海賊でにぎわう宴会なのだ。 海賊達は、私にもう気づいている。
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だが、誰も襲ってこない。何故だ…?どいつもこいつもこちらを見てニヤニヤし… ‼ 私の第六感が危険を告げるのと、 ガラッ 足元が崩れたのはほぼ同時だった。 くそっ、罠だったか! 咄嗟に私は七つの秘密道具「鞭」を手に取り、近くの海賊に向かって投げる。 ヒュンッ! そいつの胴に絡めると、私は思い切り引いた。 反動で私は落下を免れ、 「うわぁ〜っ‼」 そいつは悲鳴を上げながら罠の底に落ちていった。
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海賊たちは当然怒り狂った。多勢に無勢だ、非常にまずい。私の鞭は三メートル近くあるが、数十名の海賊を相手にするには分が悪い。ここらで二つ目の武器を出しても大丈夫だろう。だって6パラだし。私は躊躇なくピストルを抜き、天井の鍾乳石を撃ち抜いた。 落雷のような激しい音が耳を劈く。 「今度生まれてくる時は、鍾乳洞で宴会するんじゃねえぞ!」 勝利である。私は分かれ道に引き返し、『苦行の門』に進むことにした。
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『苦行の門』・・・。 どんな試練が待ち受けているのか・・・出来ればさっさと終わらせて欲しい・・・もう7パラだし・・・。 そんな事をボヤいていると突然ライトの光が照らされ、見ると某宗教の尊師らしき人物が・・・。 「私を信じなさい。信じれば救われるのです。」 そう言うと、奇妙な歌と共に奇怪な踊りを踊り始めた。 ・・・耐えろ・・・耐えてこそ苦行を成し遂げるんだ・・・。
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これを耐え抜けば、素晴らしいハッピーエンドが待っているはずだ! 黄金像を手にした私!それを讃える新聞記事。見出しはこうだ「冒険家イソディ・ジョーンズ博士 またもや偉業達成!黄金像と美女をゲット!」 ん⁈……美女? そうだ!美女はどうした?ハッピーエンドを迎える為には冒険の苦難を共に乗り越えた美女が必要だろが! しまった!迂闊だった!もう8パラも残り23文字。後戻り出来ん!いや!エンタメを信じよう!
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仕方がないからそのまま進む。しばらく歩くと前方に光が見えた。宝だ! 少し低めの穴をくぐり、光の中に飛び出す。するとそこでは、沢山の美女達が宝の山の前で踊っていた!私の願いは天に届いたのだ!私はそこに参加し、幸せなひと時を……… なんてことはなく。確かに黄金像はあるが、………これは、持ち帰れないな。大きすぎる。 私は溜息をつき、家に帰……… え、またあの道を戻るのか⁉︎ もう嫌だ………。
- 完 -