メロンソーダはお揃いで

彼はここに来ると、決まって窓際の席に座り、メロンソーダを飲みながら本を読む。

そんな彼を、私は今日も眺めた。
「あらぁミカちゃん!今日も独り?」
店のおばさんはいつもそうやって私を茶化す。
「一人で来ちゃダメなんですか?」
私は皮肉っぽく言った。
「そんな怒らないで、はい!いつもの!」
おばさんはそう言って彼と同じメロンソーダをコースターの上に置いた。
本当は私、レモンスカッシュの方が好き。

翡翠(桜前線で待機)

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「…あれ、何か、ダメだったかな?」

そんなに暗い顔でもしていたのだろうか。
ニコニコと陽気に笑っていたおばさんの表情が、叱られた子供みたいにシュンとしたものに変わる。

「っ、ううん、なんでもない。」

氷でいっぱいのグラスに口をつけ、 ならいいんだけど なんてカウンターの奥に戻る笑うおばさんを見送った。

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彼はいつもゆっくり本を読みながら、時間をかけてメロンソーダを飲む。
最後の方はすっかり炭酸も抜けているだろうに、ちっとも気にしないようだ。

炭酸の抜けたメロンソーダは甘さばかりが増して少し苦手だ。
それでも私は、ここにくるとメロンソーダを飲む。

せめてもの繋がり。
私は彼に話しかけることを許されていないから。

からん、と溶けた氷が音を立てた。

ミズイロ

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私と彼の父親は同じ人物だった。けれども、私たちは正式な兄弟ではない。互いに違う学校に通っていたから、面識は殆どなかった。部活動の試合の日、彼の姿を見つけたのは母だった。母は彼と話しては駄目よ、と私に言い聞かせた。

しばらくして、一人の女の子が店内に訪れる。露出させた肌は白く、細い足にヒールがよく似合っている。彼女は彼の席に座り、
「長いこと待たせてしまってごめんなさい」
と述べた。

aoto

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「頼まれてた事、父に頼んで調べてもらったわ」

彼は本を閉じ、彼女をじっと見つめる。
その沈黙が私をも緊張させる。
彼女はひと息ついた後、はっきりと言った。

「結果、貴方に兄妹はいなかった」

彼の睫毛が悲しげに伏せられるのが見えた。
違う。嘘だ。だってここにいる。

貴方の妹が。

「父が貴方のお父さんに直接聞いたの。
親友に嘘はつかないと思うわ」

嘘だ、嘘だ、

「嘘だ!」

HAL

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がちゃん、とグラスが割れた。それと共に今までの彼と私との関係が一気に崩れた気がした。

「嘘、その人が言っていることは嘘だ。だって……だって、私が貴方の妹なんだから」

女の子は可哀想な目で私を見た。そんな目で見られることなんて、なにもしていないのに。

「それは貴女の妄想よ。そんなことを言ったって、彼は貴女のものにはならないわ」
女の子は私にそうきつく言い放ち、彼と共に店を出て行こうとした。

神路奇々

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「待って!!」

止めようと彼の腕をつかむ。
私の行動に彼は驚いていたが、そっと手を下ろし私が話すのを待ってくれた。

「……部活動の試合があったあの日、私は母から貴方が兄だって教えられたの。貴方も妹がいるって聞いたから調べてたんだよね?」

そうと言ってほしくて彼の目をまっすぐ見る。

「……いきましょ。」

女の子が彼を店を出ようと促す。
彼は何故か私に悲しそうな顔をしてそのまま出て行った。

h_neko*

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そうか、と私はふいに悟った。
母は内緒で私を生んだんだ。
だから父も私の存在を知らないし、彼に話しかけてはいけないと言ったのだ。

ああ、やっぱり親子だ。
せめてもの繋がりを、作りたくて。
私はメロンソーダを頼み、母は私を生んだ。
それだけのこと。

「ミカちゃん……」
「おばさんごめん。お勘定お願い」
私は会計を済ませて店を出た。

いのり

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店の外に立っていたのは、彼だった。
どうして、という私の問いを制するように、彼は苦しそうに口を開いた。
「悪かった。こんな真似をして……あの店に妹が来ていることはずいぶん前から知っていた。今のは全て芝居だよ。君に……自分から名乗り出てもらうための」
握られた手が、微かに震えている。
「辛い思いをさせては、と思ったけれど、それでも──会いたかった」
メロンソーダの炭酸が、胸の奥でぱちん、と弾けた。

まーの

- 完 -

作品情報

メロンソーダはお揃いで

#19989

リレー期間

11ヶ月