「ねーねー綿あめいっーぱい作ったらお雲さんみたいに乗れるかなあ?」 にこにこと問いかけてくる(姪っ子3才) 難問すぎる。 いや、待て流石にこの問いが分からないわけじゃない。僕はもう高校3年生だ。 難しいのは、いかにこの笑顔を崩さず、 しかしこれから生きていく上での知識を与える…というこの上ない高難易度のミッション。というか雲には乗れるって思ってるのがまたなんともだ。 …どう答える?
- 1 -
「綿あめじゃ、ベタベタになっちゃうから難しいよ。そもそも雲っていうのは乗ることは出来ないんだ。何故なら雲は空気中の水蒸気が上昇してそれが水滴や氷に………」 いやいやいやいや…まて俺…。 それじゃクールすぎるだろ。 三歳児にそんな事言ってもわかるわけないじゃないか。というか、子供の夢を壊しちゃダメだ! 「え〜っと…」
- 2 -
「綿あめさんが雲になるのは、すごく時間がかかるんだよ。まずお空を飛ぶ練習をして、それからお空の神様の国で修行をして一人前になった綿あめさんじゃないと、雲にはなれないんだ」 これで納得してくれるだろうか? 「ほんと?じゃあ、あたしが綿あめさんにお空の飛び方おしえてあげる!いちにんまえになったら、あたしのことお迎えに来てくれるかな?」 さらに苦しい状況になってしまった。 「いや、でもね…」
- 3 -
「…でもね、綿あめさんに何かを教えるっていうのは、とても大変なことなんだよ?」 「どうしてー?」 「だって舞ちゃん、君は綿あめさんとお話ができないでしょ?」 「えっ?」 「綿あめさん語ができないと、綿あめさんも困っちゃうよ」 「…お兄ちゃん」 舞ちゃんは可哀想なものを見るような顔になる。 「夢をこわしちゃうようで悪いけど、綿あめさんは喋らないよ?」 「……」
- 4 -
それでも、舞ちゃんは諦めなかった。 「それじゃあ。綿あめさんの言葉で書けばいいんだ! そうだよね?」 状況が悪化してゆく。書くのがダメなら、絵で描くとか言いそうだ……。 この、どんな状態でも前向きにめげないという、チャレンジ精神だけは見習いたいが。 仕方がないので、黙っていると、、 「無理、なの?」 うっ。何かに耐え切れず「そ、そんな事ないよ」と答えてしまったorz。 どうしよ、。
- 5 -
「実はねぇ、お兄ちゃんも綿あめさんとお友だちになりたいと思ったことがあるんだ」 「ほんと?」 「いろんな国のあいさつで、綿あめさんに話しかけたんだ。でもね、綿あめさんはおしゃべりしてくれなかった」 舞ちゃんの顔が曇る。 「だからさ、一緒に綿あめさん語をお勉強しよう!」 「うん! でもどうやって?」 今日は夏祭りのはず。 とりあえず… 「じゃあ今からお祭り行こうか!」 舞ちゃんの顔が輝く。
- 6 -
綿あめ屋さんはすぐに見つかった。 「ご、500円もすんのか…」 砂糖の塊の癖に高いんだな… 「おじさん!おじさんって綿あめさんとおしゃべりできるの??」 舞ちゃんは陽気に綿あめ屋さんに話しかけた。 「…出来るとも。だから綿あめさんを作り出せるのさ。」 それで500円儲けるんだもんな。 「綿あめって優しい味がするだろう。だから心が優しければお話できるんだ」 よく言うよ。500円が。
- 7 -
「そのピンクの綿あめさんください。」 俺は心の中で毒づきながら、500円を差し出した。 「ん?お兄ちゃんこれはねパチパチ入ってっから、700円なんだ、どうする?」 なんだと。飴がパチパチはじけるだけなのに。どうしようか。 「パチパチするのぉ?パチパチは私にも聞こえるからお話ししやすいかなあ?」 爛々している姪の目を見ると手が勝手にもう200円を差し出していた。 「毎度。」
- 8 -
「パチンておしゃべりした。やさしい甘さがお口の中に広がりうれしーです」喜色満面の舞ちゃん。 「嬢ちゃんの食レポは上手!はいオマケ」 おじさんか虹色の綿あめをちぎり差し出す。すると舞ちゃんは綿あめを買ってくれたからと俺に食べさせてくれた。「虹の味、するでしょ?」と舞ちゃん。ベッドの中で綿あめの国、割り箸をくるりんと回し巨大綿あめを作りその上で昼寝をする舞ちゃんは優しい天使の寝顔でした。。
- 完 -